時間:不明 Nice BoatU 医務室 「……………………」 誰それが怪我や体調不良を訴えたときに活躍する、閑散としているに越したことの ない医務室のベッドに、橙色の空手着を着た男…、リョウが横になっていた。 しかも点滴や各種モニターが繋がれていたりする辺り、彼がここに横になっている のは単なる体調不良とかそういうレベルの代物ではないことは確かだった。 「……、リョウ……」  そのベッドの横で、椅子に座っている小さな影が一つ。ピコ麻呂ら24人の中の 一人で七色の人形遣いの異名を持つ少女、アリスであったが、その表情は これ以上ないくらいに暗く、俯きながらか細い声を漏らしていた…。  その表情に宿っているのは、心労によるものと思われるかなり強い疲労の色。 それすなわち今の状況にアリスが相当に心を傷めているということになるが… しかし魔理沙が倒れたのならともかく、何故リョウが倒れてアリスが? そんなことを考えていると…… 「ふぅん。二人とも相も変わらず……か」  不意に医務室の扉が開けられ、少年が一人…これまた24人の中の一人 社長こと海馬が相変わらずの素っ気ない口調で入ってきた。 「…あ…。ど、どうしたの……?」 「ふん、どいつもこいつもお前達のことを気にかけているのだが、なかなかこの部屋  には入りづらいということでな。俺が代表してやってきたというわけだ」 「…あぁ、そうだったの。ありがとう……」  アリスは不意に訪れた海馬の方を振り返って口を開いたが、その首を回す動作 すらもぎこちなく、彼女の疲労の強さを物語っていたが、そんな自分に対しても 普段と変わらぬ口調で話しかけてくるあたりがやはり彼らしいと彼女は苦笑し 海馬も海馬でアリスへの声かけもそこそこに、視線をリョウへと移した。 「…まぁ、そいつの意識が回復したら医師達にはすぐに伝わるようになって  いるからこれは聞くまでもないことだが、未だに眠り続けたまま……か」 「…ええ。全く…。本当に、何も…ね……」 「ふぅん。しかしロックマン達にも聞いたのだが、この頑丈馬鹿が昏睡状態に  陥るとは、お前達の…、古城エリアのミスパ戦は相当な激戦だったようだな?」 「…そうね。もう一度戦えって言われたら誰が何と言っても辞退させてもらいたい  くらい…、本当に何度も死を覚悟させられたわ…」  そう呟くアリスの脳裏に蘇るは、あの時の古城での戦い。……雑魚戦もさること ながら中盤の生きた人形・水銀燈との戦い、とりわけ最深部での吸血鬼・DIOとの 戦闘は、今思い出してもよく生きて帰って来られたと思うくらいに熾烈を極めた もので、ある意味では案の定と言うべきか。その後…… “リョ、リョウ!? どうしたのよ!? しっかりして!!”  全員が帰還してNice BoatUに乗り込むや否や、彼は意識を失って倒れたのだ。 ロックマンやアリスも調子が悪かったため、最初は激戦の末の過労かと思われたが どうも様子がおかしかった。即ち、昏睡状態に陥って今に至るわけである。 「昏睡状態にまでなるということは、相当な無茶をやらかしてきたのだろうな。  まったくどこかの凡骨よろしく、単純一直線の猪突猛進ぶりだが……   しかし不思議なものだな。…いや、お前達とは長く一緒に行動してきたから  言えるが、以前はお前達二人の間はこんな風ではなかった、むしろ距離を  置いていたように見えたが…、ム。話途中ですまんが呼び出しだ。少し失礼するぞ」 海馬はそう言い残すと、いそいそと部屋から出ていった。 「距離を置いていた、か…。実際、最初はそうだったのかもしれないのよね……」  後に残されたのは、アリスが一人。海馬が最後に言い残していった言葉を 誰に言うでもなく不意にぽつりと口を開き、その脳裏にまた過去の情景を 思い浮かべていった……。 ……………………………………………………………… “あははっ! あのオレンジ色の…空手家か? 面白い奴だな、アリス?” “うーん……。まぁ、そうともいえなくはないわね…”  彼女が自分の頭の中を今から思い返してみると、自分が初めてリョウと出会った ときの彼の第一印象は決して良いものではなかった。…いや、決して彼が何かしら くだらないことをしたわけではなく、平たく言えばウマが合わないというべきか、どこか 素直でない性格のアリスには真っ直ぐ一直線なリョウの姿は異質に映っていたのだ。 「…思えばあの頃、あなたが怒らないのをいいことに随分酷い態度とってきたよね……。  普通の人なら、私のことなんて見限ってたよ……」 最終的に24人という大所帯になったものの、アリスがリョウと出会った頃はその人数も さしたるものでもなく、必然的にお互いが話をする機会というのも多々あったのだが “よぉ、アリス! さっきそこでリンゴもらったんだが、一個食わないか?” “…い、いらないわっ。大体、何で私のところに来るのよっ!? 他の人に  あげればいいじゃない!” “む…。い、いや、悪かったな。そうするわ……” “うーっし! 戦闘終了! おいアリス、大丈夫だったか?” “大丈夫…? …何も問題なんか…あるわけないじゃない! 大体あなた、何で  来たのよ! あなたの助けなんかなくたって、私だけでも充分勝てたわ!  余計なお世話よ!” “う…、むむ。……確かに、余計なお世話だったみたいだな……。すまない……” 「……馬鹿だった……。何で、何で私は、あんな……!」 …もしも時を逆行できる力があるなら…、あの頃の自分の前に舞い戻って 思いきり張り倒してやりたい。 当時は何とも感じていなかった、自分の彼に対して とっていた態度が今になって “後悔” という形を取って、DIOのナイフ以上に彼女の 心に深く突き刺さり、じくじくと痛みを与えていた。  その後もそういう関係…間が続いたのだが、メンバーが増えるに従って二人は それぞれ “違う世界” に属するようになり、アリスとしてはある意味一件落着となった わけだが…、しかし冥王戦後に大事件が起こることとなる。魔王アナゴの力により 周知の通り、古城エリアへリョウと一緒に飛ばされてしまったのだ。 “くあー、ここの敵は強いな。……人数も少ないんだし、気ぃ抜くなよ?” “え、ええ……。い、言われるまでもないわよ……”  この時アリスは、正直なところかつてないくらいに気が重かった。ただでさえ四人と いう少人数であったことに加え、その中のロックマンとミクが既に出来ていたので ある意味彼女は “四人で” 行動するのではなく、リョウと “二人で” 行動する羽目に なったのだ。しかも…… “……え? 言ってることの意味が、よく分からないんだけど……?” “あれ、そうか? ……まぁいい、言ったとおりの意味だ。ミクはロックマンが護るから  俺はお前を護るということだ! 言っちゃあなんだが、このメンバーの中で一番  か弱いのはお前だからな! 体だけは頑丈な俺が……”  彼がそう言った瞬間、アリスの頭の中でチェックメイトという単語が浮かんだ。 大概その手の台詞を吐く人間に限って、いざ危険に出くわすと真っ先に尻尾を 巻いて逃げ出す口先男と相場が決まっているし、またそういう光景を見てきた…。  こいつなど当てにしないと、彼女の腹は決まった。絶対にその考えは変わらないと 思っていた。…しかしアリスがその“予想” が大間違いであることに気づくには、 さほど時間はかからなかった…。 “わぁっ! ……って、リョウ!?” “うおらぁぁぁ! 極限流で磨いた根性、こんなショボイ炎に負けるかぁぁ!!” “あ、あなた一体……、何してるの!? こんな、酷い怪我……!” “え? …いや、『お前を護る』 って言っただろ。だからそうしたまでだが……?”  彼の行動は、自分の予想を遙かに超えていた。彼女の予想とは裏腹にリョウは まるで子供のようにその言葉を “そのまま” 実行したのだ。  即ち炎が飛ぼうが雷が落ちようが、あるいは鋭い爪や牙が迫ろうが強烈な打撃が 襲ってこようがアリスにそれらが向けられた場合、リョウは一度の例外もなく彼女の 前に立ちはだかり、全ての攻撃を自分の体を盾にして、あるいは体術ではじき飛ばして 受け止めたのである。 “リョ、リョウさん、大丈夫ですか!? すぐに手当を……!” “はっは、流石にさっきのは痛かったぜ…! でもまぁ、アリスが無傷ならそれで  良しとする…か…。! ぐ……!!”  確かに傷は優れた回復道具で治癒する。しかし、受けた痛みの記憶までは消せる ものではない。焼かれ、切り裂かれ、殴られ、刺され……、自分がもし同じ事を しなければならなかったとしたら、たとえ傷が治るにしてもまず間違いなく途中で 前言撤回して逃げ出していただろう……。  アリスは半ば確信めいて苦い笑みを浮かべ、故に一度尋ねてみたことがあった。 “ねぇ、リョウ…。あ、あなたが私を守ってくれることはありがたいんだけど、でも  あなたは…、あなたはいいの? だってすごく痛いでしょうし、傷も残るし……”  各々の気持ちはどうあれ、リョウのおかげで自分は大きな傷を負わずにすんで いることは事実であり。そのためか少々彼女の物言いには後ろめたさを感じている ような響きがあったが、リョウはきょとんとした様子で口を開いた。 “…お、おいおい。だって考えてくれよ? お前のその顔が、敵の炎で治らなくなる  くらい酷く焼け爛れたり、爪や牙で後々まで傷が残るくらいざっくりやられちまったら  …もう取り返しが付かないだろう? お前だって、そんなのは嫌だろ…?” “う。そ、それは……、その、確かに……”  自身の体、特に顔は女の命という言葉もあるくらいに、顔に回復不可能な傷を 負わされることを良しとする女性などまずいない。アリスも女の子であるが故無論 例外ではなく、何も言えずに言葉に詰まった。 “だろ? 俺も妹がいるから分かるけど、女の子ってのはそういうのをすごく気に  するっていうから…。お前がそんなことになったら俺も寝覚めが悪いからな。  だからこういう貧乏くじは男に引かせておけばいいんだよ。そもそも俺は格闘家  だから、今更傷痕が増えたところでさほど大した問題にはならないしな。   …なーに、安心しろって。お前を護ると宣言した以上、俺は最後までやり抜くぜ。  お前に絶対、傷は付けさせない……” ………………………………………………………………………… 「…私をそうやって護ってくれたことには、とっても感謝してるけど…、でもあなた  だってすごく二枚目な…いい顔立ちじゃない…。傷が付いたら寝覚めが悪いのは  こっちも同じよ。本当に……。   …馬鹿ね。私も馬鹿だけれど、あなたも本当に……馬鹿……」  目の前で眠り続けている彼の顔は、確かに武骨ではあったが見れば整った ものであり。…アリスはリョウの顔に手を伸ばして、顎をすっとなぞりながら ため息を吐き出した。 “リョウさんですか? いや、すごいと思いますよ。…ええと、こんなこと言うと  ミクさんには悪いんですけど、正直なところ…、あんな風に1%の迷いもなく  アリスさんを庇って敵の前に立ちはだかるっていうのは、リョウさんより頑丈な  体の僕でも……”  強度の意味では、ロックマンの体は人間より遙かに頑丈に出来ている。 しかしその彼でさえも、思わず恐怖を感じるような攻撃を敵が繰り出してくる ことがあるのだが…、それすらも。 “この攻撃…、絶対に通させるかッ!! うおおおおあああああッッッ!!”  それにすらも、彼は止まらず。いやむしろ敵の攻撃が激化すればするほど それは顕著になった。ロボットのロックマンも感心するようなリョウの迷いのない 姿勢に、当然ながら最初はつっけんどんだったアリスも影響を受け始め…… “ちぃっ、なかなかやるな。…おいアリス! 今から俺があいつの動きを止めて  おくから、お前は遠距離から人形で追撃しろ! そうすりゃ勝てる!” “ちょ、ちょっと待ちなさいよ! もしあなたに人形が当たったら、それじゃ……” “おいおい、お前は熟練の人形使いなんだから、正確に敵にぶち当てることなんて  造作もないはずだろ? …それじゃ行くぜ、援護よろしくな!” “よっしゃっ! …しかし助かったぜ。お前は見かけによらず強いと言わざるを  得ない! これからも頼りにしてるからな!” “な、何言ってるのよ。あなたの助力のおかげで勝てたから…、その、ありがとう…”  最初は全く方向を別にしていた心が、流れを同じくし始めるようになり 戦闘を重ねるごとに、最初はばらばらで戦っていたのがいつしか…… “上海、蓬莱ッ!! ……よし、崩れたわ! リョウ、とどめをさして!!” “任せろッ! 覇王翔吼拳ッ!! ……やったぜ、アリスッ!” “す、すごいです! あんな見事に……!” “本当だよ。あんなに息がぴったりあった人達なんて、見たことない…!”  近距離戦でリョウが敵の動きを止めている隙に、 アリスが遠距離から攻撃 したり、あるいはアリスが敵を足止めしている隙にリョウが叩きのめしたりと 最終的にはロックマンやミクが呆然となるほどに見事な連携を発揮し、また 戦闘以外でも二人の間に変化が現れ始めた……。 “ねぇ、リョウ? さっきあなたには妹さんがいるって言ってたけど、どんな  人なの…? …やっぱり、あなたに似てるの…かな?” “お、聞きたいのか? ええとな、名前はユリって言って……” “よー、アリス。疲れたろ? コロネでも食うか?” “あ、ありがとう。 ……ね、ねぇ……、一緒に……食べない?” “お、そうか! それじゃあご一緒させてもらうとするかな……” ………………………………… 「……ようやく、色々通じ合えてきたと思ったのに、なぁ……」  長い時間を経て、やっと理解出来始めてきたと思った矢先に…… かくしてまた、アリスが目の前のリョウを悲しげに見つめていたところで 再び医務室の扉が開かれた。入ってきたのはもちろん…海馬。 「…話途中で失礼したな。……軽食を持ってきてやったぞ。食え」 「軽食……? ありがとう…。でも私、お腹は減ってない……」  海馬としてはどういう風の吹き回しか、わざわざ彼女のために軽食を持って きたが、アリスは丁寧に…と言うよりは力無く固辞すると、海馬はやや乱暴に サイドテーブルに持ってきた軽食を置いて、アリスを睨んだ。 「必要ないだと? …くだらんことを言うな。どうせろくに食事もしてないんだろう。  お前は最近、鏡で自分の顔を見たことがあるのか? 今ではお前とリョウの  どっちが病人なのか分からんぞ?」  …そう言われて、アリスが自分の頬に手をやると…。ほお骨が浮き出て、また ひどくがさついているのが感じられた。  確かに意識はどうあれ安静にしているため、肉体的には健康であるリョウと 心労等でげっそりとやつれてしまったアリスとでは、海馬の言うとおりでむしろ 彼女の方が病人に見えてしまっていた。 「そもそも生物学上女の体というものは、男よりも色々な意味で精密且つ繊細に  出来ているのだから、こんなことをしていればすぐに壊れるわ。…故に何度も  言うが、さっさと寝て休息をとれ。祈りや思いで人が救われるなら、最初から  医者などこの世に要らんわ。   大体これから未知の戦力の相手に喧嘩を売るというのに、一人欠けても痛手  なのに、二人も潰れてはどうにもならなくなる。これ以上非ィ科学的なものに  すがってないで……」    敵との戦いは一段落したが、所詮それは一段落。まだ肝心の魔王アナゴが 残っているだけに、これ以上の戦力減退を避けたいと思うのは当然であるが… しかし彼がまだ言い続けようとするも、アリスが途中で口を挟んで止めさせた。 「そんなの、分かってるわよ…! でも不安で、心配で眠れないのよ…!」  …以前だったら、今と同じような状況になった場合でも……、これは酷い言い方  だと思うけど、こうまでしなかったと思う。そりゃもちろん仲間がこうなれば辛い  ことは辛いけど、でもそれはあくまで24引く1の辛さで……、たとえリョウがこの  まま目覚めなかったとしても、そこまで動じたりすることなんてなかったと思うわ…。   でも、今は駄目…! もしこのままこいつが死んだりしたら、それは2引く1に  なって、私は1で…独りぼっちで…! 現金なものだと自分でも思うけど、そんなの  もう、耐えられない……!」  そこで吐露したのは、紛れもない自分の心の内。アリスが顔を手で覆って嗚咽を 漏らし始めると、海馬もしばらく黙っていたが…、不意にぽつりと漏らした 「ふん。だから休むことなど出来ない…か? だがこのままでは、貴様の意図とは  別の意味で2引く1は1が実現するぞ。つまり、その頑丈馬鹿ではなくお前が  引かれるという意味のな…」 「…え……!」    てっきりいつも通りに冷徹な物言いをするのかと思えば、その実言い方こそ素っ気 なかったが、その内容は…。アリスが顔を上げると、彼は目を合わせずに話し続けた。 「今までの戦闘から鑑みても、こいつの生命力は異常と言えるから近いうちに復活  するだろうが、お前はそうもいかんだろう。リョウが目覚めたら今度はお前が  くたばっている。そんな状況を生み出したいとでも言うつもりか……?」 「それ……は……、…そんなわけ、ない…。私は、あいつと……」 「ならば再三言っているが、とっとと休め。…いいか、こいつは最終通告…、いや  警告だ。次に俺が来たときにお前がこのままだったら、容赦なく麻酔ガスを  打ち込んで眠らせるぞ。それが嫌なら、ここから出ろとは言わん。隣のベッドで  でも眠ることだ。……いいな?」  一方的にものを言う海馬に、アリスは常日頃から反感を覚えていたものだったが… 今回ばかりは、反論のしようもなかった。アリスが納得したのを確認すると、海馬は くるりと入り口の方へ振り返り、それから何も言わずに部屋から出ていった。 「…………………」  他のメンバーと違って海馬もある意味リョウと同じで、言ったことは必ず実行する 人間である。麻酔ガスを打ち込むというのも、まず脅しではなく本気でやるだろう…。 「…仕方ない、よね……」  半ば諦めたように小さく笑いながら、アリスはリョウの隣のベッドに潜り込み…… ……視線は最後まで、隣で昏々と眠る男に向けられていた。 「私が眠って、次に起きたときには起きている……だったらいいのに…。  …ううん、違うわ…。……実現、してよ…。…もうあなたには二度と冷たくしないし  これからも…、これからも絶対にわがままとか言わないから、お願いだから……」 アリスの視界は眠気とは違う原因でぼやけていき、そして徐々に途切れていった。  えーと。リョウアリです。そばさんの「優しいせなか」に触発されて作ったもので、元々は 「古城の世界」終了後に投下しようと思っていたのですが、あちらは完結までまだ相当 時間がかかる上、こちらも先に出来てしまったので投下した次第です。  海馬を出したのは、アリスとの対比というか…、一番適役だと思ったので出しました。 タイトルは最後までどうしようか迷いましたが……、まぁ、これでよかったかな……? あと、おまけの台無しバージョンです。 タイトル通り雰囲気完全にぶちこわしですので、読まれる方はそれ覚悟でお進み下さい。 「リョウ……」 アリスが今にも泣きそうな顔で俯いていると、勢いよく背後で扉が開かれた。 「オラオラオラ…、じゃない、無駄無駄無駄ァ! リョウ、さっさと起きろッ!」 「いい加減遅刻の常習犯も、ここまで来ると凍らせてジャンクにするわよぉ?」 「な!?」 振り向いたアリスの目に入ってきたのは、お馴染みのDIOと水銀燈だった。 「ちょ、ちょっと待ちなさいよ! あんたたちどうやってここまで……」 アリスが驚きのあまり目を見開くと、二人の後ろから気まずそうにロックマンと ミクが姿を現した。 「え、えーと、その……、すいません、そういうことなんです」 「フフフ。こいつらに案内をさせて、人がいるところではザ・ワールドを使いながら来たのだ」 「まぁ警備もなかなかのものだったけど、何とかばれずに来れたわぁ。……さ、今宵も  飲み屋でアンニュ〜イ、といくわよぉ」 「な、なな……! でも、今は無理よ。リョウがこんなんじゃ……」 呆れ顔を浮かべるも、しかしアリスはまたしゅんとなった。 「マヌケが。お前はリョウがそんなに簡単にくたばるタマだと思っているのか?」 「そ、それはそうだけど、でも事実昏睡状態なわけだし……」 「昏睡状態? ……フフフ。馬鹿め。ちょっとどいていろっ。起こしてやる。  …お酒が飲みたい。お酒が飲みたい。アリスがぴちぴち魚ちゃん……」 DIOがリョウの耳元で怪しげな言葉をぼそぼそ喋った、次の瞬間 「う、うおおおおおっ! 酒! 飲み会ィィ!! …っと。お、DIO。おはようさん」 「フン。寝坊助が。予約はしてあるからさっさと行くぞッ」 まるで何事もなかったかのように、リョウが晴れ晴れとした顔で目を覚ました。 「な、な、な……!?」 呆然とするアリス。DIOは満足げに笑って口を開いた。 「フフフ。実は奴にはある種の催眠療法を施していたのだよ。即ち体を極限まで  休め、来る暴飲暴食に耐え得るようにするための……な……?」 「流石に博識のアリス・ライデンロイドと言えども、知らなかったみたい…ねぇ……?」 しかしそこでDIO達の動きが、ぴたりと止まった。その視線の先にあるものは…… 「……私は一体、何を心配していたのかなぁ……!?」 効果音をつけるならゴゴゴゴと言ったところだろう。眉をひくつかせながらアリスが震えていた。 「い、いや、アリス、落ち着け……!」 「無駄だな。もう奴には何も聞こえてはおるまい……」 「はぁー……。やっぱりまずかったかしらねぇ、これ……」 「万国人形流星拳!!」 ド ッ ゴ ー ン ! ! オワタ