……それは、いつ頃のことだったろうか。 ニコニコ世界某地区にて、一組の夫婦が誕生した。 夫婦の名は、男の方がリョウ・サカザキ。女の方がアリス・マーガトロイド それまでの、同居はすれど婚姻はせずの同棲関係を “こういう形” で 打ち切り……めでたく、結ばれた。 その二人が結ばれてから、しばらくたってからのこと。  街道をその夫婦の嫁の方、アリスが歩いていた。…いや、歩いていると いうよりは、小走りに駆けていたと言うべきか。それも大量の食材を手に提げて この上なく嬉しそうな表情で、興奮に息を切らせて。  そしてそれは家にたどり着いてもまだ止まらずに、今度は台所に直行。先ほど 買ってきたばかりの食材を早速切り始め、火にかける。…時間はまだ夕方に なりかけたばかりの、食事を作るには早すぎる時間。そんな時間から作り始めると いうことは、何かしら相当に手の込んだものを作ろうとしているのだろう。  …手の込んだ、普通では作らないような料理。 なぜ彼女がこんなことを? もっとも、想像するのは難くないことではあろうが……。 さて彼女が夕方から料理を作り始め、それがほぼ出来た頃 「ただいま〜と言わざるを〜得な〜い♪」 「あ! おかえり!」  ……玄関から聞こえてくる、若い男の声。それを聞いた途端に、待ってましたと 言わんばかりにアリスはまた小走りに玄関に向かった。 「おかえり、リョウ! 今日は随分、早かったね!」 「お、おう。今日は首尾よく用件が片づいたからな。…しかしアリスよ、どうした?  やけに今日は機嫌がいいみたいだが、何かあったのか?」 彼女が元気であるのはいつものことなのだが、しかしそれが今日はやけに 目立つ。いぶかしげな様子のリョウを前に、アリスは大きく首を縦に振る。 「ふふふ。こんなところで立ち話も何だから、早く入って! すごいよ〜!」 「あ、ああ……?」 食卓 「これはこれは、また………」 「ふふふ。すごいでしょ? 夕方から作り始めたんだからね!」  さて二人はそのまま居間を通り過ぎ、食卓へ行き着いたのだが…、目の前に 広がる光景に、リョウは呆気にとられた様子でいた。もっとも、それも無理 なからぬと言うべきか。なぜなら食卓に並べられていた料理は、まさに豪勢を 絵に描いたようなものであったから。…まるで先の挙式で出たような、そんな 料理が二人分。 「…いや、こいつは確かにすごいが…、しかしお前がここまでやるということは  相当にすごいことがあったようだが、しかし何があったんだ?」 「ふふ。何だと思う? …すぐに分かると思うよ?」 「…何だ? 今日は何か、記念するような日だったか? お前と俺がここに来てから  まだ一年経ってないし、結婚してから一年も経っていない…。お前のでも俺の  誕生日でもない。…他に何か、あったか…?」  アリスがこんな豪勢な料理を作った理由として、本日が何かしらの記念日である 可能性があるという結論に達したリョウだったが、だがそれが何であるかが全く 見当がつかない。思わず首をかしげると、彼女はくすくすと笑い…… 「それじゃ、正解発表するかな? …まぁ、正確に言えば今日じゃないんだけどね  今日判明したというか……」 「………………。 !! え!? な、ま、まさか……!?」  そう言いながら自分の腹をなでてみせると、ぽかんとそれを見ていたリョウが 急に目を見開いて彼女を指さすと、アリスは顔を赤らめて俯いた。 「そう…なのよね。…実は今日、ちょっと体調が変だと思ってお医者に行ったら  おめでとうございます、って………」 「お、おめでとうってことは、やっぱり、子供が…………?」  若夫婦に結婚の次に起こり得る大事、それは懐妊。もはや頭から湯気でも 吹き出さんばかりに顔を赤らめてアリスは嬉しそうに笑ったが、しかし…? 「………、は、はは。そうか。そうなのか。ははは…! 俺に、子供が出来た…?  ははは…、まさか、本当に……?」 「え? あ、あれ? 何か……、ひょっとして、何かまずいことでも……?  ええと、経済的に負担が増えるとか、そういうのとか………」 …何故かそれを聞いたリョウは顔に手を当て、奇妙な声で笑い出し…、アリスも 先ほどの笑顔が戸惑いへと変わる。…さっきまでの笑顔はどこへやら。今や 本格的におたおたし始めたが…… 「はは…。あぁ、いやいや。誤解してもらっちゃ困る。別にお前にも、子供が  出来たことにも何の問題もない。それは本当にすごく嬉しいんだが…、ははは。  いやな。今までの俺の人生を省みてみると、すごく笑えてきちまってな……」 「…? 今までのあなたの人生、っていうと…」 「…ああ。お前にも前に話したし、他の連中からも俺がこれまでどういう人生を  送ってきたかは聞いてるだろ? …今まで妹以外にはろくすっぽ女関係なんざ  なかった…、だから女との付き合い方も、それ以前に話し方すらもよく分から  なかった。端から見たら誇張抜きでつまらん男だったのによ……   …なのにお前は俺といつも一緒にいてくれて、先日はああやって、“申し込み”  を受けてくれて、そしてとうとう、子供が…………  …お前と出会えて、本当に良かった。…ありがとうよ………」 いつの間にかリョウは、彼女の肩に手を回して…、満面の笑顔を投げかけながら ぎゅうと抱きしめた。 「あ………」 彼に抱きしめられるのはこれが初めてではないであろうが、しかしアリスは 思わず全身が熱くなるのを感じ…、…自分の方からも、彼の体に手を回した。 そうしてしばらく抱きあったあと、リョウはアリスをその腕から解放し 「……予定では、いつ頃生まれるんだ?」 「……………。あ、あ! え、ええと、今が確か二ヶ月目くらいだって言ってた  から、あと八ヶ月くらいで、かな……?」 「ははっ。まだそんなにかかるのか……。……待ち遠しいと言わざるを……  一体、どんな子供が生まれてくるんだ……? はっはっは……!」 まだ本日判明したばかりだというのに、既に親馬鹿スウィッチが入ったのか リョウがとろけた顔をしてうずうずしながら笑い出すと、アリスは彼の前から 立ち上がって台所に下がると、パンが入ったかごを持ってきた。 「じゃあ……、そろそろ食事にしない? ふふ……」 「あ、そ、そうだった。忘れてたな……。いかんいかん……。はは。今日は  せっかくお前が腕によりをかけて作ってくれたんだ。冷ましちゃまずいよな!」  …そして、食事開始。朗報による高揚感が料理の味の良さに拍車をかけ いつもよりやはり嬉しそうに、終始にやつきながら食事を口に運ぶリョウを 見て、アリスもまた嬉しそうに目を細めてながら食を進めていった……。 翌日 「それじゃあ、買い物に行ってくるわね」 「おう。気をつけていってこいよ!」  時間は、昼過ぎ。最初はリョウが行くと言っていたのだが、なるべく動ける うちに動いていたいとアリスが申し立て…、リョウに見送られながら買い物に 出て行くアリスの姿があった。さて、どこまで買い物に行くのかと見てみると… 「え! アリスさんにお子さんが? それはおめでとうございます!  お祝いに、カレーパンいっぱいおまけしておきました! ご老人にも食べられる  ようにあっさりした新製品ですから、問題なく食べられますよ!」 「こんなに? …私もともかく、あいつも大食らいだから助かるわぁ…。ありがとう!」  …その行き先は、パン屋。若い女性が店主として営んでいる…そして店舗品の実に 5割近くがカレーパンという少し変わった店で…。  …とにかく、店主とアリスはどうやら相当な顔なじみのようで、近況報告するや 否や店主は顔を輝かせてカレーパンを提供し、アリスも心から喜んだ笑顔でそれを 受け取った、実にほほえましい光景があった…が 「まぁカレーパンに限らず、カレーっていうのは健康食の代表みたいなものなん  ですよね。何故ならカレーの味の素となるスパイスは漢方薬にも通じるところが  あり、実際にカレーに隠し味として漢方薬を入れると味わいに一層深みが出ると  いう報告もあります。そんなカレーを一年365日カレーライスを主食にカレー  うどんなどをおかずにすれば健康維持には……」 「す、ストップストップ! カレーの効能はよーく分かったから、その辺で……」  …ただし、これも知る人ぞ知ることであるが、彼女はカレーのことになると 暴走する傾向にあり、これまでにもカレーの悪口をぽろっと一言こぼしただけで パイルバンカーで全身くまなく蜂の巣にされたり、あるいは生きたまま八つ裂きに されて埋葬された者がいるという。  嘘か誠かは定かではないが、彼女のカレーへの熱の入れぶりを見ていると あながち単なる噂とも言い切れないので、アリスとしてはなるべく波を立てない 方向で接している…ようである。  アリスを前に店主もようやく落ち着いてきたようで、軽く咳払いをすると また笑顔で話し出した……。 「でも、いいですよねぇ。そこまで相思相愛の仲で。私もここで店を開いてから  色々な人を見てきましたけれど、これは嘘誇張ではなく…本当にアリスさん  達くらいに仲の良い夫婦っていうのはなかなかいませんでしたよ?」 「そうかしら? …ふふ、ありがと! …でも今から思えば…、昔は結構馬鹿な  ことを考えていたりもしたなぁ…。まぁ、私もまだまだお子様だったってことなん  だろうけれど…。ふふふ…」  そう呟く彼女の脳裏によみがえるのは、かつて古城で…DIOとリョウが 怪しい笑みを浮かべながら何かをしていた傍ら、水銀燈と二人で 話をしていたときのこと……。 …………………………………………………………………… “え? 彼…リョウがあなたのことをどう見ているのかって…?  そんなの、今更聞くまでもないじゃなぁい? それともおのろけかしらぁ?” “ち、違うのよ。…何て言ったらいいのかな、うん。  …確かにあいつは私を、すごく…護ってくれた。そのことに関しては感謝しても  しきれないくらいに感謝しているんだけれど……  …でも、時々考えちゃうのよね。あいつは別に、“私だから” 護ってくれたん  じゃなくて、『仲間だから』 単なる同僚の仲間意識で、…そういう理由で  護ってくれたんじゃないかって…。  も、もちろん護られてた私の立場でこんなこと言うのは滅茶苦茶だって自分でも  分かってるけど…。でも…、あくまで私の心の中の意見として…、その……” “ああ、分かる分かるわぁ。恋する乙女の悩みというやつねぇ…?  …で、答えるけれどね。私はリョウ本人じゃないから彼の心中は分からない  けれど、これだけは言えるわ…。  貴女もあのDIOと一戦交えた身だから分かるとは思うけれど、彼を相手に  まともに立ち向かうことも…、ましてや誰かを護りながら戦うなんてことが  そうそう簡単にできると思うかしらぁ…? “! そ、それは……。う、うぅん……。私もDIOと戦ったとき、最初は圧倒  されて全く動けなかったし、その後だって何とか強がって見せたけど、実の  ところは震えが止まらなくって…。…今考えると、よく死ななかったものだって  つくづく思うわ……” “…ね? 貴女もそうなら、リョウも程度はどうあれそうだったはず…。  …なのに彼は、貴女を本当に傷一つつけないくらいに徹底的に守護して  しかもあのロードローラー大爆発の時でさえも、もう爆発で死にかけの体  だったのに、DIOのナイフを全部体を盾にして受けてくれたんでしょう…?  こんなのは、貴女のことを本当に大切だと思っていないと出来ない行動よ…。   もしも貴女のことを “ただの仲間” としてしか見ていなかったとしたら  逃げ出さないにしても、自分の身を守ることに専念しだして貴女のことなんて  構っていられなくなるわねぇ。…まぁ、そうなったら全滅は必至だけれど。 “…………………………………………”   “…以上、証明終了Q.E.Dといったところかしらぁ?  男がこれだけ女を大切にする以上、恋愛感情が発生しないわけがない。  …断言してもいいわぁ。あいつは貴女のことを……………” …………………………………………………………………… 「へぇ…。以前から色々とおのろけ話を聞いてましたけれど、アリスさんの  旦那さんは立派な方ですねぇ……」 「そうなのよね。その証明は、正解でした…。ふふふ……!」  店主のカレー話に匹敵するような勢いで、これまでにもこういう話は何度も していたのだろう。今度は店主が呆れ笑いのような顔をして… 脳裏には水銀燈とのやりとりを浮かべ、新たな命の宿った腹を撫でながら アリスは実に嬉しそうな笑みを浮かべた。    「…男の子か女の子、どっちになるんだろうなぁ…。男の子だったらあいつ  みたいに勇猛になってほしいし、女の子だったら人形作りも教えたいし……  …まぁ、どっちにしてもきれいな子に生まれてほしいよね……」  やはりアリスも女性であるだけに、容姿には強い関心があるようで…、こういう 子供であってほしいというイメージを頭に浮かべ、ふぅと息を一つ吐きだした。 …もっとも、リョウやユリ、あるいはアリス自身の容貌から鑑みれば、どちら側に 似たとしても、整った顔つきという意味ではまずハズレはあり得ないところであるが。  …そうしてアリスは目を細めて、まだ見ぬ我が子に思いを馳せていたが しばらくするとカラスが鳴き始め、その声にはっと顔色を変えた。 「…っと。いけないいけない。こんなところで考え事してたらあっという間に暗く  なって寒くなっちゃうわね。早く家に帰らないと……」 「そうですね。お体には気をつけて、お帰り下さいねー!」  夏の日から比べると、冬の日照時間は驚くほど短い。いつの間にか辺りが 夕焼け色に染まり始めているのに気づくと、アリスは店主に手を振って急いで 帰路へ付いたが…、その途中、妙なものが目に入ってきた。それは…… 「…あれ? どうしたのよ、こんなところに…?」 「いや、散歩がてら外に出てみただけだ。そしたら偶然な……  ああ、荷物くらいは持つぜ?」  彼女が目にしたのは、家にいるはずの夫…リョウの姿。散歩がてら外に出たと 言いつつ、実際のところは……。彼の心境を想像したアリスが思わず吹き出すと リョウも見抜かれたかと照れ隠しに頭をかき、しかし手招きすると彼女も小走りに 駆け寄って横に並び、二人そろって帰路についた。 「…ま、偶然なんてごまかすほどのものでもなかったんだけどな。家を出るときの  お前の意気込みからすると、結構色々買い込みそうな雰囲気があったからよ。  …だから、な。クソ重い荷物引きずってくるのも酷だと思って……」 「うふふ…。やっぱりあなた、優しいッ! ホントに男の子でも女の子でも  あなたみたいな性格の子供に育ってほしいわぁ……」 「はっは。そりゃお褒めのお言葉ありがたく頂戴いたしますぜ、と。まぁ頭は  お前並みに賢く回ってくれないと困るけどな。はっはっは!」 夕暮れの暖かな橙色の光に照らされて、親馬鹿丸出しの会話をする二人の顔も また暖かみのある色に染まる。笑顔で楽しそうに話をするその姿に、これぞ幸せの 姿かと思われた、しかしその時。 「ふー。……なんか、疲れちゃったなぁ……」 「え? …お、おいおい、どうした?」 アリスの歩く速さが徐々に遅くなり、それに気づいたリョウが声をかけようと したら、彼女は自分の体にいきなりもたれかかってきたのだ。 まさか体調でも崩したのかと、リョウの表情がこわばったが…… 「…ねぇ、リョウ? 抱っこ…、お姫様抱っこしてくれない? ふふ……」 「…………。ハイ?」  否。満面の笑みで自分を見つめるアリスに、落差もあってかリョウは 一瞬呆然とした後、がっくりと首を折った。 「…『母は強し』の格言の正体、かくの如くというべきか…? お前ももうじき  母親になるってのに、それがこんな甘えぶりで大丈夫か? はっはっは……」 「ふふ。いいでしょ? そりゃ確かに母親になるんだからしっかりしないと  いけないっていうのは分かるけれど、そればかりだと疲れちゃうわよ……。  …本当に…、あなたにこうしてもらってると心がすごく落ち着くの…。私が  心から甘えられるのだって、あなただけなんだから……」  ゴロゴロと喉をならしかねない勢いで夫にもたれるアリスと、顔は苦笑い しつつも結局は買い物の荷物を肩にかけ、妻の肩と膝の後ろに手をまわして 持ち上げるリョウとで、端から見れば実にほほえましい光景で… 「…これからもさ、色々迷惑かけちゃうかもしれないけれど……  でもその分元気な子供産むから、許してくれるよね? ふふ…!」 「おう。何と言っても俺とお前の初めての子供だからな。…そのための迷惑なら  いくらでもかけてくれ…。いくらでも応えてやるからよ…」 その言葉には、心からそう期待しているという響きが感じられ。いつの間にか 自分の腕の中で、至福の心地よさを感じているような安らかな顔で寝息を立て 始めた愛妻の髪を優しく撫でて、今一度彼女への愛しさを認識すると 家へと向かう足の進みを早くした……。 おまけ 「ホッ、ホアアアアアアア………。アリスもとうとう、かよ……」  このクソ寒い寒空の下で、暖かで幸せ一色のリョウとアリスを窓の外から 見つめている影が一つ…。おなじみの?キーボードクラッシャーである。 ただし今回は、谷口のいない…一人きりであるが。 「畜生! 谷口の野郎も…、俺のこの上ない仲間だと思ってたあいつも  師匠とかなのはちゃんに囲まれて、鼻の下のばしやがって……!  ああ、いいさいいさ! お前みたいな野郎は甘ったるいザワークラウト (キャベツの酢漬けで、ドイツの伝統料理)でも喰ってやがれ! フヒヒ…!」  …どうやら、(限りなくくだらない意味合いで)谷口とは袂を分かった様子で… 目を爛々と輝かせ、鼻息を荒くしながら訳の分からないことをぶつぶつと 呟くその様は、どう見ても(ry  とにかく、そんな彼が二人の家の窓に張り付いているとなれば? …何を 企んでいるかはもはや言うまでもあるまい……。 「…さぁ、計画を練らないとな。まずはどこから攻めるか……」  それをやったら犯罪だし、お前では返り討ちにあって八つ裂きにされるぞと いう天からの声がどこからか聞こえてきそうなものだが、あいにく今の彼は 全く耳に入っておらず。舌なめずりをしながら某世紀末よろしく指をぱきぱきと ならした…が、その時! ※以下、クラッシャー独白形式にてお送りします。  …そう。俺がそうやって立ち上がろうとしたらさ、誰かが…肩に手を置いたんだ。 まさか谷口じゃねーかって思ったんだけれど、あいつの手にしちゃやけにでかくて ごっつくてな…。そもそも人間の手じゃない。そう思ったんだ。  それで、振り返ってみると…、やっぱり人間じゃなかったな。何かこう…… 全身金色に輝いててよ。顔にはマスクみたいなものつけてて、パイプが首に… あ、手の甲に時計の文字盤みたいなもんがついてたな。  新手のモンスターかと思って身構えようとしたけれど、もうその時には遅かった。 そいつは呆れた顔してため息ついて…、で、俺の腹に拳を一発。そこで俺の 意識は途切れちまった……。 ……………………………………………………………  目が覚めたら…、辺りは真っ暗だった。目が慣れてくるに従って、徐々に辺りも 見えてきた。どうやらどこかの地下室みたいなところにいるんだってな。  で、この地下室。結構広い。そして人の声やら物音が俺の他にも結構聞こえて きたんだが、それもほんの少しの間だけだったな。何故かって言うと…… 「カットカットカットカットカットカットカットカットカットカットカットカットカットォッ!!」 「廻せ廻せ廻せ廻せ廻せ廻せ廻せ廻せ廻せ廻せ廻せ廻せ廻せ廻せ廻せェッ!!」  …誰かが入ってきた足音が聞こえてきたと思ったら、そいつは…何かよく分からん セリフを喋って、最後に聞こえてきたのがカットだの廻せだのと、狂気じみた声での 連呼だった。…何をカットするのか廻すのか、全くその意味は分からなかったけれど でもそいつの絶叫が聞こえるたびに、肉を切り刻む嫌な音と恐ろしい悲鳴が聞こえて きたから、多分ろくなもんじゃないだろうよ……。  あ、悲鳴が消えた。物音も消えた。…代わりに感じるのは、生臭い鉄のにおい…。 そして、足音がこっちに…。    で、現れたのが妙ちくりんな…中世ヨーロッパの貴族みたいな格好した、阿部 さんや古泉なら鼻息荒くしそうな結構イケメンな男だった。  で、俺の顔を見るなり、不気味な笑顔を見せて閉じていた目を開けて…。そしたら その閉じた目から血がしたたり落ちてくるんだ! ウワァァァァッッ!?  ちょ、ちょっと待ってくれよ? 俺何もやってねぇよ? やろうとしたけど未遂だって。 まだ何も手出ししてねぇって。仮に職質受けてたとしても厳重注意ですまされるレベル なんだからさぁ…。だ、だから…、ちょっとこれは厳しすぎね?  あ、ほ、ほら! どうです? 俺のお宝の…… 以下不明 ご無沙汰です。ちょっとニコ動に投下する作品作ってたもので(sm8927088) 本来なら、ガキンチョ話より先にこっちを出すべきでしたが。 最近mugen経由でメルブラを知ったので、そのネタをちーっとばかし 盛り込んできました。(具体的にはカレー先輩とワラキーね)