…なんかイマイチ、ベタ甘という感じにはならんかったが…… まぁとにかく、これで締め! ご覧下さい〜! ……………………………………………………………… 「な、にぃ……!? 」  …物理的な傷こそほとんど与えられなかったものの、今までの精神的な責め苦に 憔悴し、もはや陥落まであと一歩のところまで追い詰められていた白菜だったが… それだけに、目の前で繰り広げられていた…坊主Cと削除番長があのキュウビを 破った光景を、信じられないというような様子で見つめていた。まさかこれもキュウビが 自分をぬか喜びさせるための幻影ではないかという面持ちだったが 「なーにを鳩が豆鉄砲を食ったみたいなマヌケ面しとるんじゃ! 兎の嬢ちゃんも  永琳の姐さんも、何よりあの鈴仙の姉ちゃんがお前の帰りを待ちわびとるんじゃ!  さっさと帰って、そのしなびた面ァ見せたらんかい!!」 「…やれやれ。魔王候補ともあろうあなたが、この程度で足腰まで立たなくなりましたか。  まったく、これではこの先鈴仙殿とお楽しみをすることも……」 「ば、馬鹿野郎! 何言って……、ぐう……」  二人の言葉に…、特に坊主Cの発言に顔を沸騰させて抗議する白菜だったが それでもすぐにふらふらと倒れ込んでしまい…。二人もさっと白菜の横につくと それぞれ肩に手を回し、番長の背に乗せるとすっと立ち上がった。 「やれやれ、こんのヘタレが! まーちっと、しゃきっとせんかい!!」 「ここまでなっているなら、キュウビの狐鍋にぶち込むのもありですなぁ?  さぞかし、良い鍋の具の一つになることでしょう…!」 「て、てめえら……、言いたい放題言いやがって………」  弱々しいものではあったが、しっかりと “彼らしく”、悪態をつける様子に二人は 肩をすくめて苦笑いをして。彼の帰りを待ちわびる者達のため、永遠亭に足早に 歩を進めた……。   …………………………………………………………………………… さて、一方の永遠亭では……… 「…………。…あう…。またこんなに作っちゃってた………」  あれから…坊主Cらがキュウビ討伐に出かけてから、鈴仙の消耗ぶりが命にまで 危険が及ぶまでになってきたので永琳が秘蔵の睡眠薬を使い、強制的に夢も 見られないような深い眠りの世界へ導入…。 鈴仙が秘薬によって眠っている部屋の扉を隔てた向こう側では、永遠亭の住人が一人 因幡てゐが彼らの帰りを今か今かと待ちわびていた。 見ればその手元には、待っている間に無意識に作ったのだろう。永琳の薬の包み紙が 文字通り山と大量に積み上げられており…、それに目を落として彼女ははぁと息を 一つ吐き出した。 「…兄さん……。…鈴仙だけじゃなくて、私も…、私だって待ってるんだよ…。  ……坊主さんに、番長さん…。…本当に、お願いだよ……」  彼女たちのこれまで過ごしてきた時間からしてみれば、彼の存在していた時間など ほんの瞬き程度のものでしかないはずなのに、それがいつの間にかこんなにも 大きなものとなっており。てゐはその体をうずうずと動かしてゐた。 …………………………………………………… 「………、! な、何てこと。私としたことが……。  …我ながら、ここまで何も手につかなくなるなんて……。」  一方、“月の賢者” 永琳の部屋で、この部屋の主の永琳もまた彼らの帰りを、 今か今かと待ちわびた様子でいた。 見れば何かしらの秘薬をすりこぎで粉ひき、調合していたのだろうが、それも混ぜ すぎて変色、薬としては使い物にならないものになってしまっていた。 「…“月の賢者” も、所詮は人の子…ってことかしらね…。鈴仙やてゐだけじゃなくて  私の中でも、こんなに彼の存在が大きくなっていたなんて……」  てゐだけならいざ知らず、常に沈着冷静な彼女までもが心ここにあらずといった 状態で。すりこぎを机におくと、そのまま目を閉じて祈るような姿勢を取り……。 「兄さん…………」 「白菜君…………」  二人が二人とも、全く何事にも手につかないといった様子で坊主Cらの帰還を 待っていた、その折だった。…てゐの兎の耳が、ぴくりと動いた! 「あ……!!」  兎の優れた聴覚は、常人には拾えない音まで聞き取ることが出来る。その耳で 聞き取ったのは、足音…。つい最近聞いたことのある、草履と革靴の足音! それが近づいてくるとなれば、導かれる答えは一つ。てゐが息を弾ませて永琳の ところへ行くと、彼女もまた顔を上気させて立ち上がっていた。 「師匠! これって……、間違いないですよね!」 「…ええ! 私の薬の成分が香っているもの。キュウビみたいな闇の者には絶対  持てないものだから、偽物であるわけがないわ……!!」  本物であることの確証が持てて、それがどんどん永遠亭に近づいてきて…… 二人の胸は、これ以上ないくらいに高鳴った。扉を叩く音が聞こえたときには てゐだけでなく、永琳までもが勢いよく走り寄っていった。 「おーい! 兎の嬢ちゃんに、永琳姐さんよ! キュウビをぶっ潰して白菜共々帰って  きたぞ! 早く開けてやってくれんかー!?」 「番長の言うとおり、キュウビも打ち倒して白菜も無事に生きたまま取り戻してきました!  任務完全完了でございますよ!」    二人のせかす声に焦りつつ扉を開けると、その開けた先にいたのは…… …今更疑う余地もない。白菜と、彼を背負った番長と、嬉しそうに手を挙げる坊主C! 「坊主さん! 番長さん! それに……、兄さんッ!!」 「三人とも……、よく…、よく、戻ってきてくれました!!」  その光景を、どれほど強い気持ちで待ち望んでいたのか。顔を紅潮させて目に 涙をためて、二人揃って坊主の手を取り番長に抱きつき、…そしてそのまま、番長に 背負われている白菜のところに。 「永琳さんに……、てゐ…。…すまんですねぇ…、ヘタ打っちまって……」 「白菜君も…、よく頑張ったわ…! 本当に、よく戻ってきてくれたわ…!」 「兄さん…! 待ってたよ! 本当に、待ってたんだよ!! 兄さん!!」  白菜がいない間に自分たちの脳裏に浮かんでいたのは、彼がキュウビに食い 殺されていたり、或いは坊主達と一緒に八つ裂きにされていたりする、どれも惨劇 そのものの光景だったのだが…、その白菜が憔悴こそしているが、五体満足で 帰ってきた! 力なく謝る白菜に対して二人は、もはやこの時点で二人共が涙腺崩壊。 顔をくしゃくしゃにしながら彼の帰還にむせび泣き……。うれし涙に泣きに泣いた。  とはいえ、それも長く続けるわけにはいかない。自分たちよりも遙かに、遙かに 彼の帰りを待っている者が、まだ白菜との再会を果たせていないでいるのだ。 一日千秋どころの話ではない。…てゐは涙をごしごしと拭き取ると、真っ赤な顔を したまま一層大きな笑顔を作ってみせた。 「さ、こっちこっち!! 早く早く!!」  白菜の、帰還。それを誰よりも待ち望んでいるのが誰かであるなど言うまでもない。 てゐはもはや番長の学ランを破らんばかりの勢いで引っ張り、鈴仙の部屋までつれて きて。永琳と坊主Cもその後ろを、走るまでには至らずとも興奮した面持ちで歩き…  ついに、やってきた。てゐが鈴仙の部屋の扉を開け、永琳が目覚めの薬を飲ませ …目覚めた鈴仙はしばらくぼんやりと辺りを見回していたが、突然…やはり白菜の 顔を確認するとその目を大きく見開いた。 「はく……さい……?」 「そうだよ! 白菜兄さんだよ! あの坊主さんと番長さんが、助けてくれたんだよ!」  未だ目の前の状況が信じられずにぼんやりとしている鈴仙を、てゐが何とか興奮を 抑え、白菜の方を指さし鈴仙の肩を叩きながら説明し…、白菜の方も、永琳から処方 された応急処置の薬のおかげか、ふらふらとした足取りながらも、ゆっくりと鈴仙の ところへと近寄っていった。 「はは、は……。しばらく…、本当に十日とちょいだけだってのに、見ないうちに  お前…、随分と、やつれちまったもんだな……? ははは……」  時間的にはほんの十とわずかなものでしかなかったが、その間に味わった“地獄”は 計り知れないものであり…。白菜もさることながら、鈴仙は特に酷くむしばまれていて その様子が、彼女がどんな思いで今までを過ごしていたかを雄弁に語っていた…。 「まぁ、お前もそうだったんだろうが…、俺も、こればかりはきつかったぜ……。  だがよう、…帰ってきた。帰ってこれたんだ。すまんねぇ……」  あれだけ明るく快活だった彼女の変貌ぶりを実際に目にして、白菜の心中には これ以上ない苦い思いがこみ上げたが、それを呑み込み。ようやく再会できた想い人に 向かって手を伸ばした……が 「……! や、やめてぇ!!」 「!!? 鈴仙…!?」  しかし、白菜の手が鈴仙に触れるか触れないか、まさにその瞬間…。彼女は悲鳴を 上げてうずくまり、がたがたと震えだしたのだ。この期に及んで一体何事かと、全員が 緊張に体を強ばらせて息を呑むと…… 「嘘…だよ……! こんなの、嘘…夢だよ……!  また私の目が覚めたら、いなくなって、悲しくなるだけで……!!」 「れ、鈴仙……! 何言ってるのよ! この白菜兄さんは、本物……」 「…いや、それだけじゃ不十分なんじゃ。…キュウビの畜生が、とんでもなく精巧な夢を  見せやがったみたいじゃからのう…。たとえ白菜が何を言っても、ワシらがどれだけ  説明したところで鈴仙嬢ちゃんは心から納得できんわい。『また白菜がいなくなったら』  その恐怖がある限りは、な……」 「そ、そんな…! ここまできて……!!」  白菜の姿を目の当たりにしながらもそれを認めようとしないのは、先のキュウビの 夢の責め苦によるものだろう。…喜びで胸をいっぱいにしたところで、それが消えて しまえばその反動は言いようもないくらいに耐え難いものとなる。故に今の態度も そんなものを味わうくらいならという自己防衛からなるもので……。 「馬鹿野郎…、って、言いてぇとこだが…、…そうもいかねぇ……よな。  …いいさ。恐がりの鈴仙に、これ以上ない…、確かな証拠を見せてやる……」  鈴仙の態度は理解できるものと、白菜も何も責めはしなかった。しかしだからといって このままでは話が先に進まない。ならばどうするのかと思えば、白菜は…、突然。何か 策があるとでも言わんばかりに笑い、鈴仙の傍へと近寄っていった。 果たして何かと皆が見守っている中で、白菜がとった行動は…… <●> <●> 「あ……!!」  それは、二人が出会ったきっかけにもなった、彼固有の必殺技・眼力。この世で 唯一鈴仙の持つ狂気の瞳と対抗できる、ただ一つのもの……。 …それが出来る、ということは…? …鈴仙の涙はいつの間にか止まり、おぼつかない 足取りで。自分を見て笑顔を作っている白菜のところへ足を進めた。 「…これで、納得できたろう…? …お前の夢に出てきた俺は、これが出来たか…?  出来たわけ、ねぇだろう……? こいつは、俺しか出来ねぇんだからよ……?」 「…本当に…、本当に、白菜なんだよね…!? 夢なんかじゃない、本物の…!」  口ではどうあれ、胸はこれ以上ないくらいに高鳴り、その目には既に歓喜の涙が 浮かび…。対する白菜はにっと一笑いして、覆い被さるように彼女を抱きしめた。 「…ついで、だ…。こんなに…、こんなに暖かい亡霊や夢なんざ、ねぇだろう…?  ……すまん、ねぇ……。本当にすまなかったな…、鈴仙……!!」 「…白菜…!! 白菜!! うわあああああぁぁぁぁああああんん!!!」  時間的には十数日のことなれど、当人達にとっては百年にも感じられたもので。 まさに永遠亭中に響き渡るような、いやそれには留まらずこの辺り一帯に聞こえ 渡るような大きなうれし泣きの声が聞こえてきて…… 「…すまん、ねぇ…。本当に…すまんかったなぁ……、鈴仙…!」 「うわああああああ……!! はく…さい……! 白菜……!!」 その中心にいた、鈴仙と白菜と…。固く固く抱擁し合い、双方共が涙して…… 四人はそれを見届けると、足早に部屋をあとにしていった……。 ……………………………………………………………………  “…今までは、夢の中だけだった。   夢の中では彼に出会え、心行くまでいっぱいに甘えることが出来て  絶対に離れないと、強く抱きしめ合ったものだった…。  でもそれは、所詮は虚構。目覚めたときには自分の横には誰もいなくて  夢が甘美であった分、余計に現実に絶望を感じていたものだったけれど… 「…うぅ、わぁぁ…! うぅぅぅうう……!!」 「お。目ぇ覚めて…、またこれか。一体何回目だ? はっはっはっは……」 「だって…、だってだって! 本当に…辛かったんだよ…? 白菜が死んだって聞いて  本当に何回死んじゃおうって考えたか分からないくらいに…、辛かったんだよ…?  それが、白菜が生きてるって分かって…、分かっ…て…、帰ってきてくれて…!!」 「…そうか。本当に…心配かけたなぁ…。すまんねぇ…、本当によ…」   …でも、今は違う! 自分の頭を撫でてくれている、この手も! 自分が  抱きついているこの体も! 自分の心に救いをくれるこの声も!   ……全部、本物! 断じて幻なんかじゃない!!  彼は今確かに自分の目の前にいてくれて、自分に暖かみを与えてくれて  自分をしっかりと、抱きしめてくれている…! 絶対に、夢じゃない!!” 「絶対…、やだ! 絶対に…離れないよ…!! 絶対! 絶対!!  …あなたが今度、いなくなったら…! 冥界だってどこだって、追いかけて  連れ戻すんだからね…!! 私とずっと、一緒にいてもらうんだからね…!」 「お、おいおい。無茶苦茶を言ってんじゃねぇと言いたいが……  …だが、その通りだよな。俺もお前と、こんなくだらねぇ終わり方で別れちゃあ  成仏なんて、出来たもんじゃないからな………」  それは、乾ききっていた焦土に注がれた恵雨。目覚めたときのみならず、眠りに ついているときも、一体どれほど流すのかという勢いで鈴仙は喜びの涙を流し… 白菜も決して無事な体ではなかったが、それでも精一杯に彼女の髪を撫でたり 彼女が寄るがままに抱き寄せたりしており…… お互いがこれ以上ないくらいに望んでいた再会を、心行くまで満喫していたその時。 「…おやおや。まったくお熱いご様子で……」 「おうおう、魔王候補も形無しじゃのう! 今の姿を他のミスパ連中にもばらまいて  見せてやるかのう! がっはっは!!」  突然聞こえてきた声に振り返ると、そこにいたのは坊主Cと削除番長。 自分たちの姿をにこにこと微笑ましそうに見つめており…、白菜もちっと軽く舌打ち すると、ふっと笑いを浮かべ。鈴仙の頭を撫でつつ二人の方を向いた。 「…坊主に、番長…か。…まったく、ちったぁ空気読むことが出来ねぇのかと……」 「はっはっは! 命の恩人に対して、もう少し感謝の意を示してほしいものじゃの?」 「実にその通り。あんな大仕事をすることになるとは思いませんでしたよ……」 「! あ、ああ。…お前達があのキュウビをぶっ潰してくれたのは、俺もこの目で  見てるからな…。そいつはここで寝てる鈴仙共々、心から感謝させてもらってる…」    以前だったらば絶対にとらなかった、実に素直な態度で白菜は二人に向かって 頭を下げ。それを見た二人も、こうまでなったかとまるで親が子を見るような目で 微笑んでみせ……   「フン! ま、分かればええし…、見たところ、連れてきて正解だったようじゃな?」 「…まぁな。見ての通りでよ…。鈴仙の奴、離れようとしないんだよ。はっはっは…。  少なくとも俺が目を覚ましてからは、ずっとこの状態で……」 「それだけ、あなたに惚れているということでしょう。…あなたがいなくなった時の  彼女の悲嘆ぶりは、正視に耐えうるようなものではなかったですからね…」 「…ははは…。俺なんかに…ね。まぁ俺としても、こいつと離ればなれってのは  絶対に勘弁願いたいところではあるからな……」  その言葉に宿るは、安堵と固い誓い。一度離ればなれになってしまったことの苦みを かみしめて、白菜が力強く言葉を口にすると…、それを聞いた二人はにやりと笑みを 浮かべ、踵を返して部屋の扉を開けた。 「お、おい? どこ行くんだよ? まだ鈴仙は目を覚ましてないのに……」 「…なに、さっきあなたも言われたとおり、お二人の時間を邪魔するのも野暮でしょう。  今日はここで失礼しますよ……」 「鈴仙ちゃんに関しては、また後日顔を出すとするわい。ほんじゃあな……」 ………………………………………………………………… 「ふー…。これでもう後は、何も心配はいらなさそうですな……」 「強いて言えば、あの部屋の温度が上がりすぎることくらいかのう? がっはっは!」  二人の、これ以上ないくらいの幸せを見届けて四人は部屋を後にして。キュウビも 打ち倒し、白菜も無事に永遠邸まで連れ帰ってきた。久しぶりに大仕事をやったと 坊主Cと番長は全身から力が抜けた様子でゆっくりと椅子に腰を下ろした。 これにて一件落着と穏やかな様子で話をしていた、その時。永琳とてゐが二人の 前に並び、突然膝を折って座り込んだのだ。これはいったい何だと坊主達が顔を 合わせていると、永琳が床に手をつき…… 「…本当に、ありがとうございました。あの大妖怪のキュウビを退けることが出来た  のも、白菜君が無事に戻ってきたのも、全部、お二人のおかげです……。  本当に今回の件に関しては、お二人に言葉が及ばないほどの感謝をしています…」 「二人とも…、兄さんを助けてくれて、本当にありがとう! 本当に……」  そこにあったのは、永琳もさることながら、てゐも…彼女らが心から発する感謝の 言葉。ひざまずいて、頭を深々と下げて。過ぎるとも言えるくらいの謝礼の様子に 坊主Cも番長も、実に照れくさそうに頭をかいた。 「な、何をそんな、頭をお上げ下さい! 我々には勿体ないものですよ!」 「べ、別にあんたらが関係せんでも、ワシらは白菜を助けとったからですのう!  じゃから嬢ちゃんも、顔を上げてくれ! 普通にしてくれりゃええんじゃ! な?」  困った顔をして、頭を上げるように坊主が、番長が笑いかけると、永琳は流れる嬉し 涙を拭きながら顔を上げ、てゐは顔を上げてすぐ、元気よく番長の背中に飛び乗って… やはり元気になった様子の弟子の姿を見て永琳はくすくすと笑うと、すっと立ち上がった。 「…それでは、お二方。鈴仙たちを救ってくださった、せめてものお礼としまして……  ささやかなものですが、お礼の宴を開きたいと思います。お付き合いいただけますか?」 「うん! …私と師匠が、本当に心込めて作るからね! 美味しいもの、いっぱいだよ!」 「ほほう! 宴とな! そりゃあワシにとっては願ってもない朗報じゃが…。  坊主よ、お前はどうするんじゃ?」 「ふふふ…。坊主としては、ここは敢えて固辞するのが良いのかもしれませんが…  だが、私はとうに破戒僧! 坊主としての格好など知ったことではありません!  開いてくださる宴とやら、喜んで参加させていただくと致しましょう!!」  打倒キュウビを労って、永琳達が開いてくれるという宴の席…。坊主Cも番長も、断る 理由などどこにもあるはずもなく。ニヤリと実に嬉しそうな笑みを浮かべると、二つ返事で 了承の意を露わにし…。それを見るや否や、永琳とてゐは喜んで厨房まで走っていき… その夜、永遠亭ではそれはそれは賑やかな宴が開かれたそうな。 ……………………………………………………………  “地獄を知れば、天国を知ることが出来る” とはよくいったものである。 むしろ今回、その“地獄”の味がこれ以上ないくらいに強かったので そのあとの“天国”も、ひとしおのものとなり……。 実際に、白菜と鈴仙はこの後…… ……これはまた、別のお話……。 終焉 これにて閉局! …いや、ここから「巨大なる第一歩」へと続いていくのです…。  甘いまんじゅうを美味しく食べるには苦いお茶が不可欠、という定義に従って 前半中盤はとことん落としました。で最後で一気に昇華、と。  でもこの話を書いてて一番楽しく書けたのは、前にも書いたけどてゐと番長。 健気な女の子と優しい兄貴分で、実に筆が進みました。戦闘シーンよりも。