救済 -魔理沙-  その1

すまんねぇ。地獄ルートから先に手付けたんだけど、こっちのが先に出来たから
こっち先にうpします。多分こっちのが後で終わるけどね。では!

…………………………………………………

ようやくアリスの顔の傷が治り、古城メンバーが皆で喜んでいたその一方……


「はー……。しかしその話を聞く限りじゃ……、お前、とんでもねぇことしちまった
 みてぇだなぁ……」
<汝の罪、百の死を以てしてでも裁ききれぬ!>

「……………………」
「お、おいおいサトシにオワタ王! 今日はそんな話をしに来たんじゃないぜ!」
「そうです。責め苦なら彼女はもう嫌という程受けていますから、ここでも
 責めるのはお世辞にも良いとは言えませんよ……」
「今やるべきは、解決策を早く見つけること……ですね」

場所はピラミッドエリア。ここに今ミスパの闇サトシ、オワタ王と、ピラミッドエリアを
担当していた遊戯、古泉、言葉、そして騒ぎの張本人の魔理沙が集まっていた。


「まぁ解決といっても、今回のは今までの小さな喧嘩とはわけが違うからな……。
 確か彼女は重度の……、第三度の火傷を顔面に負ったと聞いたが?」
「僕もそう聞いていますよ。となると言うまでもないですが、そんなに簡単に解決とは
 いかないでしょう。…時に被害者のアリスさんはどうしているんです? 彼女が退院して
 からリョウさん達と一緒にどこかに行っているのは見たことありますが……。誰か、何か
 ご存じないですか?」
遊戯が唸り、古泉が誰ともなく尋ねると、闇サトシがおもむろに手を挙げた。

「ああ、実は古城の水銀燈から話を聞いたんだけど、何でもその、アリスか? 顔の
 傷はDIOが治してくれたらしくて、今は殆ど元通りになったってよ。やけにはしゃいで
 深夜に電話かけてきやがった。時間を考えろってのに……」
「!!」
その知らせを聞いた途端、早速一同が…、とりわけ魔理沙が顔色を変えた。


「アリスが……、治った……?」
魔理沙が呆然としながら…その一言だけをようやく呟くと、その横で

「アリスさんの傷が治ったんですって!? すごいじゃないですか! これなら…!」
思わず目を輝かせて喜ぶ言葉。しかし一方で遊戯と古泉は浮かない顔で見合った。

「確かに傷が治ったというのは良い方向に向かっていると言えるけど…、古泉君…」
「ええ。それで全てがチャラとなれば簡単ですが、魔理沙さんがアリスさんに大怪我を
 させたという事実が変わったり消えたりするわけではありませんからね…。まだまだ
 手放しで喜ぶことは、出来ませんよ……」

「です、よね……」
「い、いや、お前が落ち込むなよ、言葉…。悪いのは私なんだから……」
二人の重い発言を聞き、さっきまでとは一転して言葉も思わず沈んでしまった。


「……でもまぁ、悪い方向に進んだわけじゃないだろ。…で、これからどうすんだ?」
闇サトシが尋ねると、それに答えるように遊戯が口を開いた。
「…とりあえずまずは、ああいう傷を負ったら女性はどう感じるかというのを知るところ
 から始めないとな。俺達男ではやっぱり完全には理解できないだろうし…。それが
 分かればアリスさんの気持ちも、少しは理解できてくるんじゃないか…? まぁ他人の
 心の内なんて外から分かるもんじゃないけど、やらないよりは……」
「確かにそりゃありだな。ええと、“敵を知り、己を知れば何とやら” だっけ?」
闇サトシが頭を捻ると、今度は横から古泉が割って入ってきた。
「正しくは “敵を知り、己を知れば百戦危うからず” というんですけどね。
 それでは同じ女性ということで、まずは桂さんに意見を伺うとしましょうか?」
「え? わ、私ですか?」
古泉に話を振られ、言葉は一瞬驚いたような風を見せたが

「…そうですね。ではあの、アリスさんと同じ目にあったと仮定していいですか?
 それと霧雨さんは……、これからのお話は大丈夫ですか……?」
言葉が魔理沙の方を向くと、魔理沙は一瞬体を震わせたが首を縦に振った。
「! あ、ああ…。私は張本人なんだから、聞かないわけにはいかないだろ…?」
「……分かりました。では始めますね……」
すると言葉もまた頷いて、目を伏せながら話し出した……。


「…私はアリスさんじゃありません、ですのであくまでこれは私の意見になるんですが
 仮に顔の半分を焼かれるような大火傷を負ったとして、その加害者にどういう気持ちを
 抱くかといえば…、…霧雨さんには悪いですが、許すことはやっぱり出来ませんね。
 おそらく同じ目に遭わせるか、…いえ、時には殺害も考えると思います。男性の方には
 分からないかもしれませんが、女にとってはそれくらい重大なことなんです……」
「…………!!」
いつも大人しい言葉の (彼らからしてみれば) 意外とも言えるような発言を受けて
オワタ王以外の全員はいきなり顔を苦くした。

「……な、なぁ。どうも架空の話には聞こえないのって俺だけか……?」
「い、いえ、僕らも同じですよサトシ君…。……それで、続きは……?」

「はい。…それで、アリスさんは霧雨さんを拒絶して、あなたに会わなければ嫌な記憶を
 忘れることが出来る、それで私は救われるというようなことを言っていたようなんですが
 それはまず無理ですね」
「? それは…どういう意味です?」
「ええとですね、これはその…、女の空想力の悪い方向のたくましさとでも言うべきなんで
 しょうかね。忘れようとすればするほど、一人でいればいるほどかえって色々沸々と
 頭の中にわき上がってきたりして、恨みや憎悪は増大していくものなんです。……でも
 人を長い時間恨み続けたり憎み続けるのは、すごく精神的にも肉体的にも辛いんです。
 まして今回の一件くらいに大きなものだったらどうなるか、想像はつきますよね?
 ですから、アリスさんが霧雨さんを拒み続けるなんて事はできっこないと思うんです。
 無理をすればアリスさん、壊れてしまいますからね……」
言葉が言い終えると、闇サトシと遊戯が感心したような口振りで話し出した。

「成る程。つまり恨みや憎しみを糧にする復讐鬼は所詮作り物の世界の住人ってわけか。
 …となると、そこから解決することも出来るんじゃねぇか?」
「確かに。…なら次は、アリスさんの情報…、彼女の考え方なんかが知りたいところだな。
 この中で、彼女のことをよく知っている人といえば……」
途中まで言うと、遊戯は…、いや、彼につられて皆が視線をずらし始めると
「……私、だよな……」
勿論その視線が集まったのは言うまでもなく、魔理沙だった。


「…魔理沙さん、その…、キツいとは思うんだが、協力してもらえないだろうか…?」
遊戯はどこか腰が引けたように話すが、対する魔理沙は首を横に振る。
「気を遣わなくてもいいぜ。私はあいつと仲直りを…、自分がやったことを謝りたいんだ…。
 それにこれは私個人の問題なのに、皆付き合ってくれてる…。だったら私だって、自分の
 やれることは何でもやるぜ…。四の五の言ってる場合じゃない……」
…そして魔理沙が苦しそうではあるものの笑顔を見せると、遊戯はまた口を開いた。

「それじゃあとりあえず、この状況に即するように、思い出すままに言ってくれないか?」
「分かった。アリスの……、!? …う、く……!」
「ど、どうしたんですか、霧雨さん!? 大丈夫ですか!?」
しかし思い出そうと目を閉じた途端に魔理沙は頭を抱えてうずくまり、言葉が急いで駆け寄った。

「な、何でだろうな…? あいつの情報を思い出そうって頭に力入れたら…、急に……」
「いえ、何とか大丈夫そうですね。……でも、これでは霧雨さんからお話を聞くのは……」
「無理、ですね……。するとどうすれば? ロックマンやリョウさん達古城メンバーに話を?」
古泉が提案してみるも、しかし遊戯は暗い顔をした。
「いや、それはマズイ。彼らはかなりアリスさんの近くにいるだけに、俺達…魔理沙さんに
 必ずしも協力してくれるとは限らないからな。下手して今騒ぎが起こると面倒だぜ……」
「う、確かに…。そうですね。では……」
「…………………………………………」
一同が黙りこくってしまった、しかしまさにその時

<我に考えがある。皆、着いてきてくれ>
「え? オワタ王?」
先程までずっと黙っていたオワタ王が、急に皆の頭の中に話しかけてきた。


………………………………

「着いてきてくれって……、まぁ、想像はついてたけどな……」
「僕たち四人は、始めての場所ですね……」
しばらく後、六人は古城エリアの前にいた。


「……てことはオワタ王、あんた水銀燈やDIOから話を聞くつもりか?」
闇サトシの問いに、オワタ王はその通りだと言わんばかりに返した。
<左様。彼らと我ら二人はミステリアスパートナー同士。たとえ霧雨魔理沙に
  反感を持っていたとしても、あの二人ならば説得は容易だと判断した故>
「…説得、ねぇ…。DIOはともかくとして水銀燈は……、お」
闇サトシがぶつぶつ呟いていると、古城の門が開かれて……

「あらぁ、サトシとオワタ王じゃなぁい。お久しぶりねぇ」
「先程連絡は受けたが、しかし急だな。何かあったのか?」
中から、水銀燈とDIOの二人が出てきた。


「急も何も……って、あらぁ? 今日はえらく大所帯じゃなぁい。そっちは誰なの?」
「あ、いや…、こいつらは……」
何故か急に闇サトシが目を余所にそらしながら、口ごもり始めた。するとその横で
<彼らは汝らで言えば古城メンバーに相当する、ピラミッドエリアのメンバーなり。順に
 武藤遊戯・古泉一樹・桂言葉・霧雨魔理沙と……>
オワタ王が彼に変わってピラミッドメンバーの紹介をした。しかし……

「!? 霧雨……魔理沙、ですって……!?」
しかし魔理沙の名前を聞いた途端、水銀燈の顔に怒りが宿った。


「な、何だ……? えぇ……?」
突然自分の名前を聞いて豹変した水銀燈に、思わず魔理沙は身震いした。
そんな彼女に向かって、水銀燈は一歩一歩距離を縮め……

「あなたがアリスを、私たちの大事な仲間のアリスをあんな目に遭わせたのね…!
 許せないッ…!! 串刺しにしてやるわッ!!」
「うわ! や、やっぱりかよ! 水銀燈! やめろッ!!」
<否! この速さ、これは予想外なり!>

そのまま羽を手に取ると、魔理沙に向かって勢いよく投げつけた。が


「え……? DIO……?」
「何をしている、水銀燈…。くだらぬことはやめぬか……」
闇サトシとオワタ王が魔理沙の前に立ちはだかるも、それは意味をなさなかった。
その投げつけた羽は全て、DIOのザ・ワールドによって受け止められていたからだ。

「DIO! 何で邪魔するのよ! あなただって聞いたでしょう!? こいつが!
 この女がアリスの顔にあんな傷を負わせ……」
攻撃を受け止められたのが不服だったか、彼女はDIOに思わず噛みついたが
「黙れ水銀燈! お前に何の権利があってあの娘に攻撃が出来る!!」
「う……ッ!!」
しかしDIOの一撃の下に、叩き伏せられた。

「…お前の気持ちも分かるが、しかし今回の一件に関して最終的に “審判” する権利が
 あるのはアリスだ。罰を与えるも無罪放免するも全てはアリスが決めることであって
 それ以外には何人だろうと、お前は勿論このDIOにもオワタ王にも、ここにいる全員が
 口出しする権限など持ち合わせていないのだ。分かるな?」
「…確かに、その通りね。今回の被害者はアリスなんだから、その意味では部外者の
 私が裁く権利なんてないものね。……ごめんなさい。冷静にならなくちゃね……」
DIOが諭すように水銀燈に言うと、彼女もしおらしくうなだれた。

「……やれやれ。…ところでサトシにオワタ王よ。何用でここに来た?」
「え!? あ、ああ……、悪い悪い。そういやまだ言ってなかったな……」
いきなり話を向けられて、先程のDIOの剣幕に呑まれていた闇サトシはようやく
我を取り戻した。オワタ王はいつものままであったが。
「ええと、さっきオワタ王がちょっと紹介したが、こいつらはピラミッドメンバーの面々で
 あんたで言うところの古城メンバーと同じようなもんだ。それで……」
<本日は霧雨魔理沙とアリス・マーガトロイドの先日の一件に関して、汝らの意見を
  頂戴したく、こちらまで来た次第なり>

「…成る程、そういうことか。ではこんなところで立ち話も何だな。応接間に案内しよう。
 こちらだ。着いてきてくれ」
そしてDIOが古城の扉を開けると、一同は後に続いて入っていった。


続く
斜刺
2008年09月05日(金) 20時18分30秒 公開
この作品の著作権は斜刺さんにあります。無断転載は禁止です。
■作者からのメッセージ
今回は初めてのピラミッドメンバー出演! オワタ王がちょっと固くなり過ぎたかな?

配布版が出たので早速古城エリアをやってみましたが、水銀燈はともかくDIOがやっぱり
鬼でした。特にミクとアリスが何回オワタにされたか。まぁそれでこそDIOなんだけれどね! 

この作品の感想です。
話の展開と雰囲気が大好きです。
DIOがとても素敵すぎて何も言えません。
続きが気になって気になって仕方が無い…!
50 豆太 ■2008-09-15 20:38:02 220.102.106.195
MAWASHI?なんですかそれ?(涙目

ミスパメンバーと陰陽師勢の交流がどこまでも深くなって行ってますねw
オワタ王とDIOに期待です
50 暮雨 ■2008-09-05 21:00:58 119.30.207.106
やべぇ斜刺さんのサトシはアニメ本編のきれいなサトシです! 50 名無しさん ■2008-09-05 20:36:28 59.135.39.132
小泉は古泉だと言わざるを得ない!(ぁ

クフ王(オワタ王)はそれくらいの方が王様らしくて
いいんじゃないでしょうか。

そしてDIOが紳士すぎる。この人になら肉の芽埋められてもいいy(ry

RIKISHIですらMAWASHIを落としてくれない俺の運に泣いたorz
50 無符「ナナシナナシ」 ■2008-09-05 20:09:10 58.188.185.133
合計 200
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