覚悟 2


「てめぇ、この……!」
常に臨戦態勢にあるのが武闘家としての姿なのだが、しかし突然の強力な一撃を
食らってリョウが激しく咳き込むと、DIOは今度は冷笑混じりに話し出した。
「どうした。今自分で言っていただろう。貴様は “このDIOに勝った” のではなかった
 かな? それがどうしてこんな打拳一発で泡を吹いている? それともこのDIOを
 油断させるために芝居をしているのか……?」
「ふざけ……るな…ッ! 勝手なこと、ほざいてんじゃねぇ……ッ!!」 
「不服か? それならば来るがいい! 貴様の身の程を教えてやるわッ!」
言い終わるや否や、DIOはザ・ワールドを召喚して殴りかかった。常人ならこれだけで
直撃を食らっていただろうが、しかしリョウも数多くの戦いを経験してきた武闘家で。
瞬間的にその攻撃を避けながら反撃の一撃を放った。
「フフフ。“少しは” やるではないか。だがそれ故に一番危険なのだがな……!」
「!? 危険? まぁその通りだな。確かにお前にとっては危険だなッ!」
次いで二撃三撃と連打を放つが、ザ・ワールドもまた近距離戦では無敵と呼べる
ほどの力の持ち主なので身軽に攻撃を避け、受け止めた。

「フン、何だ今日は? やけにいいペースで攻撃をしてくるな?」
「当然だ! 早くお前を叩きつぶしてアリスを奪い返さないと、面目丸つぶれなんでな…!」
DIOが柄にもなく楽しそうに喋ると、リョウも勢いに乗せた口調で返した、が
しかし彼がそれを言った瞬間、DIOは待ってましたと言わんばかりの表情を浮かべた。
「ほーう、それはアリスを護るという意味か? じゃああの時の貴様の台詞は何だ?
 護りきれる自信がないとかぬかしていなかったか? …クククッ。そんな半端な覚悟で
 護られるアリスは哀れと言うほかない…な!
「! く、うぅっ……! あれは……!!」
…そのDIOの言葉を聞いた途端、リョウは苦しそうに顔を歪め、動きを止めた。その
ときの心境はどうあれ、それは彼の本心からの言葉であることに変わりはなく……
思わず口ごもったリョウを、DIOは威圧感ある眼光で睨みつけながら続けた。

「昨今の世の中、小説でもドラマでもそして今この時点でも…、たくさんの人間が貴様の
 ように 『俺の大切なものを護るんだ』 ときている。…その台詞を吐く奴の大半がそんな
 覚悟も実力もありはしないくせに、何をぬけぬけとほざいているのだかな…」
「…何……だと……!? どういう意味だ…!?」
DIOの言葉を聞いてふつふつと全身に嫌な汗が浮かんでいくのを感じ、しかしそれでも
強気な態度を見せるリョウだったが、DIOは両手を広げながらため息をついた。

「まぁ、順を追って言うとしようか。…そもそも “護る” 行為自体が危険極まりないと言える
 のだ。戦におもむく人間がそんな “護るべきもの”なんぞを持つことなど、その時点で
 ご自由に殺してくださいと言っているようなものだ。…現状を見てみろ? お前の言う
 大切な護るべき者であるこの娘、アリスは形はどうあれ人質になっているではないか?
 もしもここでこのDIOが、“逆らったらこいつを傷つける” などと言い出したらどうなる?
 他にも…例えばこれから貴様達が挑むであろう魔王アナゴに捕らえられたとしたら
 どうなっていた? …奴は抗う者には極めて冷酷だ。文字通りにこの娘は “逆らったら
 傷つける” ための人質になり、お前はなす術なくなぶり殺しにされて、最終的にはこの
 アリスと一緒に悲惨な最期を迎えていただろうな……」
どんな言葉が出てくるのかと思いきや、DIOの口から紡がれてきたのはまさに真実で
リョウは思わず呆然とその場に固まった。…彼もかつて大切な存在…妹のユリを人質に
されて、彼女を奪還するために奮闘してきた過去があったので今のDIOの言葉は彼自身
実に深く理解していたはずなのだが、しかし改めてこの状況に陥り、言葉にされるとその
衝撃も一層のもので…。動けぬリョウをDIOはびっと指さした。

「これで分かるだろう? 謀略と欺きが飛び交う戦地では、守るべきものなど一瞬で自分の
 命を脅かす存在に早変わりする! …愛する故郷を守るため? 故郷が吹き飛ばされ
 たらどうするのだ?! 愛する人間を守るため? その愛する人間が人質にされたり
 殺されたらどうするのだ?! …いずれも崩せぬ絶望に姿を変え、当人を一瞬で死に
 至らしめる! あるいは敵にこれ以上ないくらいの弱みとして、つけ込ませてしまう余地を
 与えることになる! そうだ! “護るべきもの”、特にそれが人や物である場合、それを
 護るために戦うなどと言うのは、本物の戦いを知らぬマヌケの戯言だッ!!」
ぎりりと歯がみしたDIOはまたザ・ワールドを発動して飛び出し、先程とは比べものに
ならない速さで四方八方から縦横無尽にリョウに打撃蹴撃の嵐を浴びせて地面に殴り
倒すと、倒れたリョウを上から見下ろした。

「まぁしかし、その守護者が真に強き “騎士” であれば問題ない。大切な者を護り、敵も
 撃破する。これがきっちりと両立できる真の実力者ならば良いのだ。良いのだが……」
「ぐふっ!! く……そ……! ぐっ!!」
何とか立ち上がろうとするリョウだったが、鍛えているとはいえ超人的なザ・ワールドの
攻撃の直撃はやはり強力だったようで、立ち上がれぬまま膝をつき…、そんな彼を
DIOは冷たい目つきで見ながら尚も続けた。

「…その意味で一番危険なのが、中途半端な力を持った奴だ。力のない奴ならそもそも
 自分の身を護るのに手一杯で、誰かを護る余裕がない。これはこれでまだいい。そして
 真に強い奴に関しては、先程言ったから言うまでもないな? …ではそれらに対して
 お前のような中途半端な実力の奴はと言えば…、これが最悪で、今のやりとりの通りよ。
 今までは上手く立ち回って誤魔化していたかもしれぬが、お前の実際は撃破したと豪語
 するこのDIOにすらも攻撃と防御両面で遅れをとるような半端者で、しかしなまじ力が
 あるからいざ強敵との戦闘となっても引くことはせず、だからといって充分な力もないので
 突破は出来ず。…こんなマヌケを待ち受ける運命は何か? 答えは自分の命を失うだけ
 でなく、大切な人間との約束も守れない。悲劇と言うほかない最悪に行き着くのだがな…」
「!! この野郎……ッ! ほざくな……、ぐうっ!!」
迫る、迫る。DIOの言葉はナイフよりも鋭く自分の心に突き刺さってくる。これが全くの
でたらめや虚言ならば振り払えようものだが、しかし彼の言葉はそうではない。目を
背けることはそれ即ち現実逃避に他ならず…。何とか立ち上がったリョウに、DIOは
腕を組みながら更に覆い被せるように話し続け…

「自らの身を躊躇なく呈して護る? それは結構! しかしそれだけではただの“盾”
 板きれに過ぎぬわッ! その辺の雑魚相手ならそれでも誤魔化せようが、 所詮は
 メッキですぐに剥がれ落ちる! 誰かを本当に護る存在の “騎士” となるには到底
 不十分! “誰かを護る” と言うからには! 敵がどんな攻撃を繰り出してこようが
 どんな姑息な戦術を使ってこようが確実に対象を護り、敵を迎撃せねばならんのだッ!
 貴様らの仲間で言うところの、ロックマンのようにな!」
「!! ロックマン……だと…?」
…次の瞬間、DIOの口から出てきた名前にリョウは眉を動かした。今出てきた男の…
ロックマンのことは、彼も当然ながらよく知っていた。言われてみれば、“ロックミク”
などという呼び名があるくらいにロックマンもミクを護って奮闘していたが、そのことかと
リョウが息を呑むと、DIOはその通りだと言わんばかりに彼を指さした。

「そう! 奴はこのDIOがどれだけ卑劣な手段で追い詰めようとも、どれだけ猛襲しても
 そのことごとくから守護対象者の初音ミクを護り、強烈な反撃を食らわせてきた…!
 奴は貴様のような板きれとは違い、本物の “覚悟” と “実力” を持ち合わせている
“騎士” よ! …フフフ。奴ならば今の状況でも、即座に初音ミクを奪い返して我ら二人を
 追い払っていただろうな。たとえタイムストッパーを持っていなかったとしても、だ…!」
「うっ…! な、ぐ、ぐくっ……!!」
…かつて実際に手合わせしたDIOが認めるあたり、ロックマンの実力が伺える。考えて
みれば古城での戦いでも流石にDIOを相手に無傷とはいかなかったが、しかしほとんど
ミクに傷を負わせることなくロックマンは彼女をよく護り、戦い抜いた。…そう、自分よりも
遙かに。劣等感などを感じたことはなかったが、しかし…。…彼が思わずたじろぐと
DIOは一層力のこもった眼差しで睨みつけた。

「“誰それを護る” という台詞、おいそれと言ってよいものではない…! “一度撃破した”
 はずのこのDIOすらを迎撃できないで、貴様の力など何が充分なものだ? 半端な力
 など無力と同じ! …それでも貴様が自身を本物と証明したいなら、このDIOを撃ち
 破ってアリスを奪還してみるがいい。それが出来ぬなら貴様の覚悟も実力も、便所の
 ネズミのクソも同然のゴミ屑よッ!!」
「ぐ、ぬッ…! 確かにお前の言うことも、正しいと言えば正しいが…、だが言わせて
 おけば、言いたい放題言いやがって! 望む通りにしてやろうじゃねぇかッ!!」
…DIOの言うことは正論ではあるが、しかしだからといって全てを受け入れられる
というわけでもなく…。DIOは自分の胸をどんと叩くと、いつぞやと同じようにリョウを
誘い込むように両手を広げ、怒りに燃えるリョウは、怒声ににも似たかけ声と共に
突進していったが……


「フン。…アリスよ。考え直すなら今のうちだぞ? 半端な者に護られるのを良しとすると
 貴様自身、死ななくてもいい状況で死ぬ羽目になるからな。このDIOにも歯が立たない
 こいつが、この先果たして貴様を護りきれると思うか? …まぁそもそも、貴様の身を
 こうやって易々とさらわれて、且つ奪還できないでいる時点で既に失格と言えるがな…」 
「くっ……、くがっ、がはっ……!」
しかしその結果は、リョウにとって望ましいものでは決してなく…。先の衝突では手加減を
していたのだろう、元来ザ・ワールドの近距離戦闘能力は人間のそれを遙かに凌駕して
おり、如何にリョウが鍛え込んでいるとは言っても太刀打ちできるものではなく。あえなく
返り討ちに合い、DIOの腕にぶら下げられる結果に終わった。

「…しかし所詮、クズはクズなのか…? このDIOを形はどうあれ一度は打ち破ったの
 だからもう少しマシかと思っていたが、これではとてもとても…! クク…! やはり
 貴様はただ立って攻撃を受けるしか能のない板きれで、実力者ではなかったか…」
「……ぐ…! うぐ…うぅ…ッ!!」
もはやその実力の差は、明白。薄笑いを浮かべながらDIOが嘲るように声をかけると
対するリョウは目を固くつぶって俯いて屈辱に身を震わせ…、それを見るとDIOは
またフンと鼻を鳴らしてそのままアリスの方を向くと、笑みを浮かべた。
「…それにしても理解出来ぬな。なぜお前のような奴がこんなマヌケを必要とする…?
 ザ・ワールドの時間停止を使わねば仕留められぬだろうお前に対して、こちらの
 リョウはその必要性をまるで感じないほどにこのDIO、お前達二人の間に力の差を
 感じている。…弱者が強者を頼るのは当然だが、なぜ強者が弱者を……」
「うるさいッ!!」
しかしそこで一閃、アリスがDIOをぴしゃりと封じた。

「ほう……? 何だ、何かあるとでも言うのか?」
彼としては当然の疑問を問いかけたのだが、しかし返事は予想外…、ある意味では
予想内ではあったが。DIOが不思議そうな声を出してにっと笑うと、アリスは肩を上下
させて大きく息をしながら強くDIOを睨みつけた。
「武力の有無なんて、知ったことじゃないッ! 私がリョウに必要としているのはそんな
 ものじゃない! 人の善し悪しを武力でしか測れないようなあなた達に、リョウを悪く
 言われてたまるもんですか! どんなに力があって強くても、安らぎのない人生なんて
 まっぴらだわ…! 自分を支えてくれる存在が、どれほど心強いか…! …だから
 私には、リョウがいないと駄目なのよ! 他の誰であっても、仮にあなたがあいつに
 完勝したとしても、私はあなたに何の魅力も感じないッ!」


「……アリ……ス……!!」
「これ…は…。…ククククク…! ますます分からぬな! 何故あんな気丈な女がこんな
 へたれたマヌケを…? これが人間心理の妙というやつか…? …水銀燈! お前は
 これをどう思うね…?」
…気丈に大声をあげるアリスに、彼女以外一同は動きを…瞬きすらも止めたが
しかしすぐにDIOはニヤリと笑うと顔を押さえて笑い出し、次いで水銀燈に話を振ると
彼女は呆れたような…憮然とした表情をしながら答えた。
「訊くまでもないでしょう? 腑抜けた男の子に強い女の子。これが逆ならまだいいん
 だけれどねぇ…? ふふふ…! ちょっと…きつかったかもね…」
「まぁ、そうだろうな…! …おい、聞こえたか……? ん……?」
普通の状況であればこんな、人質として捕らわれている状況では縮こまることは
あっても強気な態度に出ることなどはそうそう出来るものでもないが、しかしそれでも
アリスは気高く大声を上げ…、その態度に水銀燈もDIOも賞賛の意志を見せていたが
しかし次の瞬間、DIOが異変に気付いた。何かと言えば自分がぶら下げていた
リョウが、顔を俯かせたまま小刻みに震えていたのだ。

「おや、おや、これは………」
「く……そぉ……!! くそぉぉぉ……っ!! う……、く……!!」
聞こえてきたのは、悔しさに満ちた嗚咽。もちろんそれを発しているのはリョウであり…
これではまたDIOに攻撃させる口実を与えているではないかと思われたが、しかし
何故かDIOはそんな彼を…、無念に喘ぐリョウを静かな眼で見ていた。
「まぁ、普通の男ならそうなるだろう。自分は今こんなに情けない、限りなく自己嫌悪に
 ある時に本来 “護るべき” 対象の女があんなに勇ましいとなれば、自分の惨めさは
 より一層浮き彫りに際立って感じられるし、『武』 一筋に生きてきたのにそれを頼りに
 しないと言われてはな…? お前にも男としての誇りがあって安心したぞ。これで
 お前が悔しさを、不甲斐なさを、己への怒りを感じなかったら、その頭を砕いてやろうと
 思っていたところだったからな…」
「うぅぅぅ……!! くそ、ぐ……、うぅぅ……!!」

「……りょ、リョウ……!?」
自分はそのつもりはなかったのに、しかしリョウを傷つけてしまったのだろうかと
アリスは不安に駆られて声をかけようするが、DIOは人差し指を立ててしぃっと止めた。
「お前はさっきの自分の言動がこいつを傷つけたと思っているのだろうが、だが勘違い
 してはならん。今奴がこうなっているのはこいつ自身によるもの。こいつが全部悪い
 自業自得というものだ。まぁ、変な言い方になるだろうがこれは男の世界の問題だ。
 如何に勇猛果敢だとはいえ、お前は女。だから口出しはご遠慮願いたいものだな…」
…自身とは敵対関係にあるはずが、何故かその言葉には非常に強い説得力を感じ…
彼女がそのまま後ろを振り向くと、後ろの水銀燈は黙って首を横に振りつつ囁いた。

「気持ちは分かるけど、参戦を考えているならDIOの言うとおりでやめておいた方が
 いいわぁ。…それはあなたのためと言うよりは、あそこで唸ってる彼の…リョウの
 ためと言うべきかしらねぇ……?」
「彼……、リョウのため……。! …ああ、成る程。そういうことね……」
黙って首を横に振る水銀燈に、最初こそアリスは分からないというような顔をして
いたが、しかしじきに理解できたようで。再び水銀燈の方へ顔を向けると、今度は
彼女も微笑みを浮かべながら口を開いた。
「そうよぉ。これが通常のモンスターとの戦いだったら、あなたが加勢するのに何ら
 問題はないでしょうけど…、でも今はそうもいかないわぁ。これは通常の戦闘じゃあ
 ないもの。…言ってみたら “男の戦い” ってやつかしらぁ? さっきも見たでしょう?
 あなたが気丈に叫んだだけであの始末だから、これであなたが参戦したら彼の心に
 誇りに消えぬ傷を刻むことになるわぁ。下手したら立ち直れないくらいにね。
 …あなたもそんなことは、望まないでしょう…? 」
「…つまりあなたたち、まさか……。…ははっ。これじゃまるでハートマンと同じね…。
 …でも、どうしてこんなことを…?」
…当初から、考えていた。殺害の意志がないのなら、一体この二人はどうしてこんな
ことを、と。しかしそれもこういうことかと見えてきた “結末” にアリスは吹き出して
しかし生じた疑問を投げかけると、水銀燈も彼女と同じように笑顔になって答えた。
「ふふっ。それに関しては追々説明していくつもりだけれど…、ふわふわした心で
 アナゴに立ち向かっても、その結果は100%見えてるじゃない。ちょっとスパルタ
 かもしれないけど、来世直行よりは遙かにいいでしょ? そもそも本気でDIOが
 あなた達を殺すつもりなら、最初にあいつが言ってたとおりでとっくに終わってる
 わぁ。でも実際はナイフも時間停止も使ってないんだから、彼はもう今じゃそういう
 危害をあなた達に加えるつもりなんてさらさらないのよ。勿論私もあなたに危害を
 加えるつもりはないけど、これが終わるまでは…ね」
「! そう言えば…。…そうか。答えは最初から出ていたようなものだったわけね。
 怖がって損しちゃったかな? ふふふ……」
…水銀燈の言葉を聞いて、アリスははっと息を呑んだ。…確かに今回に限っては
普段はナイフ、道路標識、ロードローラーなど凶器の使用を十八番にしている
DIOが、一度も凶器を使用していないのだ。無論それだけでなく、時間停止の能力
すらも…。勝利至上主義者の彼が、勝つことを真っ先に考えるはずのDIOがそれを
しないとすれば? …その答えは考えるまでもない。
「それならあと私に出来ることは…、あいつを見守ることだけ……ね」
…おそらくこれにて、ほぼ完全にアリスは彼らの意図を読み取ることが出来たで
あろう。女性二人が見守る一方、リョウとDIOは……


「さて、いつまでそうしている。お前も男だろう? 恋人の目の前だろう? いつまで
 腑抜けているつもりだッ! さっさと立てッ!!」
うずくまっているリョウを立たせようとDIOが蹴りかかるが、しかしその足は彼の体に
当たる前にしっかりと受け止められた。にやりとDIOが笑みを零す一方、リョウは
ゆっくりと立ち上がり…、今まで俯いてばかりだった顔をゆらりと上げた。
「…腑抜けてなんか、いられるかッ! これ以上アリスに…こんなみっともない姿を
 見せられるかッ!! 俺は絶対にお前を倒して、アリスを取り戻すッ!!」
ゆらりと顔を上げたリョウは、さっきまでとは別物と言える目つきをしており…
その眼光を受けたDIOは、嬉しそうにその巨体を震わせ始めた。

「…ククク。ようやく浮ついた性根が安定したか。…そうだ。それで良いのだッ!
 そうこなくては面白くないのだッ! これほど血が高ぶるのは、あの時にお前達と
 戦って以来かな? まぁとにかくこの決戦、最終ラウンドと行くぞ…!」
歓喜に打ち震えるDIOと、その胸に改めて強い決心を宿したリョウと。両名とも
今までとは全く違うオーラを醸し出して距離を縮め、お互い手を伸ばせば相手に
届く近距離戦における “死の間合い” へと入っていった。

続く
斜刺
http://2nd.geocities.jp/e_youjian/ld-rutubo
2009年05月02日(土) 01時23分18秒 公開
この作品の著作権は斜刺さんにあります。無断転載は禁止です。
■作者からのメッセージ
DIOのスパルタン教育?も早ければ次で決着。
しかしこの後リョウアリ絡みで3作くらい作って
あるけれど、どうしようかな…

この作品の感想です。
これはDIO、ご丁寧にもまぁww
リョウは無事にヘタレ返上なるか、どうなるか?
まぁ水銀燈の口からさっさと真実をアリス(と読者)に話したのは鬱回避にはいいかと。
50 名無しと呼んでください ■2009-05-04 10:27:08 221.36.140.3
始めてコメントさせていただきます!
あなたの書くDIOはまさにリョウのライバルに相応しいです。
熱血漢VS冷静な紳士、最後まで読ませていただきます。
50 じーおー ■2009-05-03 22:08:30 210.136.161.193
合計 100
過去の作品なので感想を投稿することはできません。 <<戻る