覚悟 1
この話は、「古城の世界」ではあれだけバチバチ戦っていた
ロックマンら古城メンバーとDIO達が「死刑以上の罰」などで
友好的に接するようになったその流れを書いた代物です。
キャラ崩壊など多少は含まれますが閲覧してくれる方はご理解を。
では!

※MAKIO氏:保管庫の私んとこのリンクですが、<少々前の出来事…
「覚悟 前編」> こいつを吹っ飛ばしましたので、お手数ですが
次回更新時リンクの張り替えをお願いします。

…………………………………………………


「……約束通り、来てやったぞ。……さぁ! アリスを解放しろっ!」
「…………………………………」
舞台はどこか現実離れした、おそらくニコニコエリアの一部であろう。そこで
これはどういった理由からか…、鍛えている彼にしては珍しく息を切らせて焦った
様子でリョウが叫ぶとどこからともなく人影が現れ、彼に向かって声を発した。

「ほう。一応お前が入ってきたのと同じくして辺りを見て回ったが、確かに約束通り
 一人で来たようだな。……成る程、それでいい。……おい」
その影が一つ…、以前ロックマン達古城メンバーとの激闘に敗れて塵と消えて
いったはずが、何故か今では健在といった風でDIOが手を挙げると残りの影も
明らかになった。それは……
「! リョウ! 来てくれた……! うっ!」
「動いちゃだめよぉ? あなたがどう暴れても私から逃げられないんだからねぇ?」
DIOが手を挙げて、その彼の後ろから一歩前に出て明らかになった影は…、何と
こともあろうに水銀燈と、彼女に捕まったアリスだった。

「…!! お前らッ! アリスに傷一つでもつけたら……!」
後ろ手を取られて苦しそうに呻くアリスと、それににやりと嫌らしく微笑んでみせる
水銀燈と…、この状況を事細かに説明する必要などあろうはずもなく。いきり立って
リョウは戦闘の構えをとったが、しかしDIOはそれを制するように手を前に出して
静かにふっと微笑むと、彼を指さしながら話し出した…。

「マヌケが。あの時も言っただろう。この女は “そういうために” 捕まえたのでは
 ないとな。もしそんなだったら、今頃状況はもっと悪いものになっているぞ…?」
「…何…? じゃあ尚更に、どういうつもりでこんな…?」
しかし次の瞬間DIOの口から発せられた意味深な言葉に、リョウは怪訝そうな顔を
して目を細めた。そもそも、何故こんなことになったかと言えば……

……………………………………………………

「………………………」
各々のチームがミステリアスパートナーズを全て打ち負かし、次元の割れ目を通過
して全員集合、一休みしているニコニコエリアの一角から少し離れた場所にて
リョウは一人沈んだ顔をして座り込んでいた。
「…………。はぁ……」
今まで悩みらしい悩みなど全く見せなかったリョウだったが、何故か今は全く正反対で
似つかわしくもなくさっきからため息を連発していた。と、そこへ
「リョウ? こんなところで一人で何してるの? 何かあったの?」
「! アリス……か。驚かすなと言わざるを得ないが…、いや、何かあったとか……
 そんなことはない、何でもないぞ」
一人でいる彼を見かねたか、アリスが心配そうな顔をして近寄ってきた。以前の彼女
ならばもしリョウが沈んでいたとしても近寄ることはしなかっただろうが、しかし古城の
一件で変化が生じたようで。彼は笑いながら手を横に振って問題ない風を見せたが
しかし彼女は引き下がらずにリョウの横にすとんと腰を下ろした。

「何でもないわけないじゃない。あれだけいつも猪突猛進で底抜けに明るいあなたが
 こんな所で一人で沈んでたら不思議になって当然でしょう? 一体どうしたのよ?」
「……言いたいこと言ってくれるな。…まぁ実際、そうだと言わざるを得ないが…」
…おそらく同じ男でも谷口やKBCには決して見せないだろう、心から心配したような
顔でアリスは半ば強引に話しかけたが、しかしリョウの様子は一向に変わらずに
相変わらず深く沈んでため息を吐き出した。

「どうしたのよ、もう。さっさと元気出しなさいって!」
…一向に様子が変わらないリョウに、彼女は一瞬息を呑んだが…、しかしたとえ普段
どれだけ明るい人間であろうとも時には沈み込むこともあるだろう。そう考えたアリスは
ぽんぽんと彼の肩を叩くと、リョウは彼女の目をじっと見つめ…口を開いた。

「ああ…。それでな、アリス。俺もお前に話しておきたいことがあるんだが、いいか?」
「……話? 分かったわ。どこで話すの? ここ?」
「そうだな…。ここでも誰もいないが…、いや、やっぱりもう少し離れたところに行くか…」
今いる場所でも人気など全くと言っていいないのに、更に移動するとはどれほどの
内容なのか? アリスはぴくりと眉を動かしたが、しかしそのまますっと立ち上がると
手招きする彼と一緒に移動した。


「それで、話って何なの?」
あれから二人が移動したのは、ニコニコエリアの端も端。周りはほぼ混沌が渦巻いて
いるというだけの場所で…。そこに腰を下ろすとアリスは早速とリョウに話しかけ
対する彼は深くため息を吐き出すと、そのまま小さな声で話し出した。

「……いや、何というか……。何か話がもの凄く大きくなったと思ってな。まぁそりゃ
 最初からそうなりそうな雰囲気はあったにはあったけど、世界を救う云々レベルに
 まで発展するとは正直思ってもみなくてな…。それで実のところ……自信がない」
「自信? ……大丈夫でしょ? 生きて帰れるって信じれば……」
さてわざわざ用心に用心を重ねて場所を決め、始めた話なのでどんな突拍子も
ない代物が飛び出してくるかと思いきや…、成る程確かに大事ではあるのだが
アリスは何だそんなことかといった顔をして落ち込んでいる様子のリョウに朗らかに
笑いかけたが、彼は変わらず小さな声で喋り続けた。

「違う。…それもあるけどな。一番大きいのは、アリス。お前のことなんだが…、いや
 何て言うかな、まぁ今は他にもたくさんメンバーがいるし、必ずしも俺が出しゃばる
 必要はないというか…。何て言うかな、その……」
「…? 本当に、どうしたのよ? いいから言ってみなさいって。聞いてあげるから…」
しかし話の内容はともかくとして、今度は歯切れまで悪くなって。これはいよいよ
何かあるのか? 不安を煽られたアリスが今度は彼の肩を掴んで小さく揺さぶると
リョウはそれを制して、またため息混じりに話し出し……
「正直な話……、自分が生きて帰ることもともかく、お前を護り抜ける…自信がない」
「!? リョウ……? それ…、一体、どういうこと…?」
…次の瞬間、リョウの口から発せられた思いもがけぬ発言に彼女は目を丸くして
彼にずいと近寄ると、しかしリョウは慌てて手を横に振った。

「い、いや! 何もお前を見捨てるとかそういう意味じゃない! …ただ、今までの
 戦いもきつかっただろ? 実際古城のDIO戦であんな下手打っちまったわけだしな。
 これからの戦いは、より一層敵も強くなるはず…。だから正直な話、今までみたく
 お前の安全を約束したり…出来る自信が…ない」
「……成る程。そういうこと……ね……」
…生物にとって、生命に関わる問題は何よりも重くなる。ましてそれに不安を感じて
いるのなら、普段どんなに明るい人間でも沈み込むのは当たり前というわけで…
合点がいったようにアリスは頷いたが、しかし直後に目つきを若干鋭くするとふっと
挑発的に微笑み、彼の傍へすっと近寄った。

「…でも、そんなに思い詰めないでよ? 私だってそれなりに戦えるんだから、あなたに
 護られっぱなしってことにはならないわ。だから、ね……?」
「ははっ、確かにそうだな。そう言ってくれると、お前を護りきる自信が湧いてくるぜ…」
そしてアリスはにこりと笑みを見せると、彼の肩にもたれるようにして自分の体を預け
リョウもまたそんな彼女を抱き寄せた。しかしこのまま二人の時間が始まるかと思いきや…


「“護りきる” だと? いいや、お前には絶対に無理な話だなッ!」
「! この声は……!?」
…突然自分の耳に飛び込んできた、聞き覚えのある…、しかし絶対に聞こえては
ならない声にリョウは振り向いたが、しかしその瞬間にはまさしく文字通りに “時
既に遅し” 全てが終わっていた……。

「え、え!? 何で!? ……リョウ! 助けてッ!」
「静かになさぁい。暴れると痛い目みるわよぉ?」
「その通りだな。特にアリス、お前は格別壊れやすく、しかも修復に時間がかかるのだ。
 下手に暴れて闘病生活など、したくはあるまい……?」
その声がした方…少し離れた高台には、アリスを後ろ手に固めている水銀燈がおり
しかも彼女らの横には、忘れもしない最凶の吸血鬼・DIOの姿があった。


「お、お前は、DIO! この状況…、また時間を止めやがったな! しかし何故だ!?
 何故あの時消滅したはずのお前がまだ生きてやがる!? どうして…」
まさかあの時完全に滅したと思っていた敵が復活、また目の前に現れことに怒りや
戸惑いが生じたリョウは叫んだが、DIOと水銀燈はさも可笑しそうに笑みを浮かべた。
「ククク…。こいつは二度目の説明になるが、まぁいい。説明はしてやるとしよう…」

…………………………………………………………………

時間は、今より少し…、ちょうど水銀燈が古城最奥の間へと駆けつけ、しかし
そこでザ・ワールドの崩壊…つまりはDIOの死を確認したあたりへさかのぼる。

「DIO…! 返事…してよ…! DIO……!!」
その古城の最奥の間にて、一人…。消え入りそうに小さな声を出している者がいた。
それは古城ミステリアスパートナーズが一人、水銀燈。先程ザ・ワールドが眼前で
崩壊、DIOの死を目の当たりにしたわけだが…、それで諦めきれるはずがなく
必死に彼を名前を呼び続けていたのだが、いくら叫んだところでその声はただ古城に
虚しく響き渡るだけで、当然返事などあるはずもなく…
「…やっぱり、駄目…なの…? あなたでも、もう……駄目…、なの…?」
元より絶望的な状況だったのでこうなるのは自明の理だったが、時間が経つに
つれて彼女の声はどんどん小さくなっていき…。ついには声を出すこともなくなり
その場にうずくまってしまった。…元より黒色の衣服に身を包んだ彼女だけに
この暗い城内で黙ってしまうと闇に紛れてしまう…、いや、絶望に支配された今の
水銀燈では、文字通りに闇に溶け込んでもおかしくはないか。とにかく彼女が
全く動きを止めた、しかしその瞬間だった。


「クク…。寝起きの一番に聞くのがこれか…。まったく、感情的になった女の金切り
 声が目覚まし代わりとは、よくよく運がない……!」
「え……? な、何、今の……? まさか……?」
不意に聞こえてきた、その “声”。それは単なる空耳だったのか、それとも自分が
DIOを思うがあまり聞こえてきた幻聴だったのか? しかし、いずれにしても…
…驚きと、その後瞬間的に胸に起こったはやる気持ちを携えて水銀燈はくるりと
背後へと振り返ると、その先には……

「やれやれ。お前ももう少し冷静で頭が回るものだと思っていたが、所詮は
 どこぞの婦警と同じようなものだ。やかましくてかなわんぞ…!」
その水銀燈が振り返った先では、これは…? 暗くてあまりよく確認は出来ないが
しかし彼女は目の前で何か液体がぼこぼこと泡立ち、だんだんと粘泥質に……
どろどろと膨れあがって人の形を形成していくのが見えた。…形成されていく
誰のものかは見紛うはずもない見覚えのある造形に、聞き覚えのある声。水銀燈の
震えは時間と共に大きくなり、そしてそれも終わりを迎えることになった。

「あ、ああ……、うわ…、ああ……!!」
「まぁ、こうなる確証がなかったからあんな遺書めいた代物を残すことになったが…
 しかし後ろ向きな保険など残しておく必要などなかったな! そもそもこのDIOに
 死などが訪れるはずもないわッ! クックック…!」
…最初は泡立つ液体、次いで粘泥質の塊を経て最終的に彼女の目の前に姿を
現したのは、他でもない水銀燈の相方の吸血鬼DIOその人であり…、DIOが復活
したのを目の当たりにした水銀燈は体を震わせると彼に向かって飛び出していき
感涙混じりに抱きつくのかと思われた、しかしその瞬間……

「この…、馬鹿馬鹿馬鹿馬鹿馬鹿馬鹿馬鹿ァッ!! 何でよ!? 戻ってくるなら
 何でもっと早く戻ってこないのよッ! 馬鹿ァァッ!!」
「ヌ、ヌウッ! 水銀燈! お前はいつの間にラッシュの才に目覚め……」
…まぁ、端から見れば猫パンチ程度の微笑ましいものではあったのだが。彼女は
眉を吊り上げてその小さな体でDIOに打拳の連撃を繰り出し、DIOは突然の攻撃に
戸惑った様子を見せつつもそれを受け止め、最終的にその胸に抱き留めた……。


「でも、どうして…? どうやってあんな、復活できたの……?」
それから、しばらく。ようやく落ち着いた水銀燈がDIO復活のカラクリを尋ねると
彼はフンと鼻を鳴らして笑いつつ、しかし彼女の頭を軽く撫でながら口を開いた。
「…実にやれやれだな。お前はこのDIOの…吸血鬼の傍にずっといたというのに
 その特性を未だに理解しておらぬとは…。クク。あの時このDIOはロックマンの
 放った強大な光のエネルギーを受けて爆ぜたわけだが…、たとえどんな強力な光の
 力を奴が持っていたとしても、このDIOは日光の直撃を受けたわけではない。この
 城が闇に包まれ続けているという状況に変化はなかったわけだ。…闇の中でならば
 永遠不滅を誇る吸血鬼は、闇の中では死は訪れない。たとえどんなに微塵の塵芥と
 分解されようともな。ならば分かるだろう? 時間はかかっても、再生できることなど
 全く以て道理ということよ…」

………………………………………………

「…と、言うわけだ。理解できたか? このDIOはたとえ粉みじんに体が吹き飛んでも
 日光にさえ当たらなければ完全に死ぬことはないのだ。お前達はその辺の詰めが
 甘かったからな。こうして復活することが出来たというわけだ…」
「! しまったわ…! 吸血鬼の特性、理解していたはずだったのに…!!」
…それは彼が復活直後に水銀燈に説明した話で、DIOの言葉を聞いたアリスはくっと
歯がみした。自身の故郷には吸血鬼がおり、何度も彼女と手合わせしていたから吸血鬼の
強靱な生命力に関しては理解していたはずだったのに…。後悔するアリスだったが
そんな彼女をよそにDIOと水銀燈はリョウの方を向き、指をさしながらまた話を始めた。

「そういうことねぇ。ま、もう少しあなた達のおのろけを聞いてもよかったけど、こっちは
 こっちでやらなきゃいけないことがあるの。というわけでこの娘は頂いていくわよ?」
「! アリス! お前ら、待ちやがれっ!! 今すぐ覇王……」
アリスを捕らえた、これが目的だったのだろうが、とにかく水銀燈が退散の意を
見せるとリョウは…、このまま逃がすと彼女がどんな目に遭うのか想像したくもない
ような想像が浮かび、させてなるかと猛りながら飛びかかろうとしたが、しかしその
直前で動きが止まった。DIOが何か…手紙のようなものを投げつけてきたからだ。

「待て。…アリスを返してほしいなら、一人でここまで来い。安心しろ、殺しはせぬ…」
「!? …ここに来い、と言うのか…? しかし、何が狙いなんだ!?」
「そいつはそこでじっくり教えてやる。だが、いいな? 誰にも…、ロックマンや初音ミク
 にもこのことは教えるな? …それでももし、お前が故意不可抗力を問わず誰かを
 連れてきた場合、その瞬間にこの娘の頭は胴体と離れることになる。心しておけ…」
その手紙に書かれていたのは、彼らが今いる場所からまた更に離れた、更に人気の
ない奥地で…。しかしDIOの真意が分からずリョウは手紙とDIOを交互に見て尋ねるも
それに対するDIOは静かな目で淡々とした口調で話し出し、一言。その用件だけを
告げると水銀燈やアリスと共にまたふっと姿を消した。


「くそッ……! 目の前でこんな…、あっさりさらわれて、何がアリスを護るだ……!」 
アリスを護ると宣言し、またそれを忠実に実行してきた彼にとっては以前のDIO戦の
結果も、それにもまして今回の一件は自分を許せるものではなく…、リョウはぎりぎりと
強く歯がみをしながら地団駄を踏んでいたが、しかしそれをぴたりと止めると顔を上げ
眉を歪めながら顎に手を当てた。
「だが、しかし……、あの野郎、一体…何を考えてやがる……?」

…………………………………………

「で、お前らの目的は何なんだ? …まぁ、聞かなくても大体想像はつくけどよ…!」
…そして、時間は今に。アリスを捕らえられたリョウが臨戦態勢を取りながらDIOと
水銀燈に向かって大声で叫ぶと、二人の…DIOが一歩前に出て、口を開いた。

「まずは質問だ。貴様らはこれから最深部に進み、アナゴに勝負を挑むつもりなのか?」
「! ってことは、やっぱり敵討ちか足止めか……!」
そのDIOの言葉を聞いてリョウの脳裏に蘇ってきたのは、かつての激戦。自分たちとは
敵対勢力のミステリアスパートナーズとしてDIOは現れ、数々の修羅場をくぐってきた
自分でも背筋が震えるほどの戦いを繰り広げ…、その相手がまた現れたということは
自分たちにとって有益であるはずがなく。今度はこうやって一人ずつ狙って戦力を減少
させるつもりだと感じ、リョウはいよいよ開戦と身構えたが、しかしDIOは鬱陶しそうな
顔をして首を横に振った。
「マヌケが。今は話を聞け。…そもそも水銀燈はともかく、このDIOは一旦消滅までした
 から既にミステリアスパートナーではない。故に貴様らをその意味でつけねらう理由は
 ないのだ。…大体暗殺が目的なら、こんな回りくどい真似など誰がするか。とっくの
 昔に時間を止めて貴様ら全員をあの世に送っているわ」
「……確かにそうかもしれないが、じゃあ……?」
リョウは先程まで、自分たち一個一個を潰すことで戦力減を狙っているのではと考えて
いたが、しかしDIOの能力ならばそんな面倒なことをする必要などない。不意打ちで
時を止めればさしものロックマンとて対応できるはずもなく。時間が止まっている間に
悠然と始末していけばよいだけの話なのだが…、ならば何の目的で、DIOはこんなことを?
 訝しげに彼が問いかけると、DIOは途端に不快そうに顔をしかめて舌打ちをした。

「そこだ。…と言うのも、いくら戦線を離脱したと言っても我慢がならんこともある…。
 それは、貴様のような半端者が一人前面してふんぞり返っていることだッ!!」
「!! な、何だとッ……!?」
「は、半端者って、何滅茶苦茶言ってるのよ!! あいつは勇猛に……」
そのDIOの言葉に、言われたリョウ本人は当然ぎりりと歯ぎしりして、アリスも聞き捨て
ならないと叫んだが、しかし対するDIOは静かに、まずアリスの方を向いて返した。

「勇猛…? もしかしてお前が言っているのは、奴が躊躇なく自分の体を “盾” にして
 お前を危険から護ってきたことか? …ククク。それで奴を “強い” と思っているの
 なら、少し勘違いをしているようだな…」
「え……? な、何で…? それが一体、何の勘違いに…?」
どんな返答が帰ってくるかと思えば、しかしDIOが自分に返した答えはまさに彼女が
リョウの強さに関して自分なりに解釈していたことで…。実際に今までの戦いで、リョウは
彼女の身にどんな危険が迫ろうともそれを自分の体を盾にして防ぎ、護ってきた。その
姿に彼女は惹かれ、知らず知らずのうちに頼りにするようになってきたのだが…、それを
どういうわけか、全否定。しかも何か意味ありげに。如何なる理由かと尋ねようとしたが
だがそれはDIOに手で制された。
「まぁ今は、そこで大人しく見ていろ。そうすればすぐに分かる……。さて」
アリスを制したDIOは、次にリョウの方へと顔を向けた…。

「半端者だと…!? 言ってくれるじゃねぇか。俺達に負けたお前がどの口でそんな
 セリフがほざけるってんだ!? 大口叩きも大概にしとけよッ!!」
さて一方のリョウであるが、半端者と呼ばれて、しかもそれがかつて…正確には
彼がやったわけではないのだが、とにかく自分達が打倒した相手からの言葉と
なれば当然ながら怒りも湧くわけで。血管を浮かばせて大声を上げた、が
「確かに俺は完璧じゃねぇが、しかしお前なんざに半端者呼ばわりされ…、うぐっ!?」
…しかしその怒りの言葉は途中で遮られた。見ると彼の腹部にザ・ワールドの拳が
深々とめり込んでおり、うずくまるリョウを前にDIOは冷えた目つきをしながら…言った。
「半端者だよ。少なくとも自分の力を勘違いしているお前では、な」


続く
斜刺
http://2nd.geocities.jp/e_youjian/ld-rutubo
2009年05月02日(土) 01時20分39秒 公開
この作品の著作権は斜刺さんにあります。無断転載は禁止です。
■作者からのメッセージ
古城メンバーと書いたけど。実質はリョウとDIOのぶつかり合いなのね。
まだまだ続くよ。

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