愛すべきお子様たち

短編3つ。リョウアリのガキんちょヒナとヒノ主役?のドタバタで。
キャラ崩壊多数につき、ご注意願いまっす!

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ケース1 叔母と姪

「うふふふ、よーく来たわね! ヒナちゃん、ヒノちゃん!」
「ユリおねーちゃ! こにちは!」
「おねーちゃ! おはおう!」
吸血鬼DIOなら似合わぬ日傘をさして行動しそうな、よく晴れたある日のこと
リョウとアリスが娘二人を連れて、リョウの実家の空手道場に訪れると
タクマは生憎不在であったが、ユリはおり。彼らが来るや否や早速姪のヒナと
ヒノの二人を両手に抱えて、タクマに負けず劣らずの笑顔を浮かべていた…。

「それにしても、おめめはくりくりでお肌も髪の毛もきれいで…。ホントに二人
 とも、お人形さんみたいに可愛いッ! ああもう、お持ち帰りしたーい!」
「お、おいおい。可愛がってくれるのはもちろん歓迎だが、暴走してくれるなよ?」
「ふふふ。お持ち帰ってもいいけれど、その子達最近ますます元気になってきた
 からね。取り扱いには困ると思うわよ?」
親馬鹿と呼べる親は数あれど、世の中には叔母馬鹿というのもあり。…まるで
某鉈少女と見間違えんばかりにユリはうっとりとした顔で姪っ子二人を抱きしめたり
頬ずりしたりして…。そんな彼女をリョウは苦笑気味に、アリスはやはりくすくすと
楽しげに、共に和んだ顔で見ていた。

「大丈夫だって! 私はお父さんじゃないからそんな変なことはしないよ!
 ねー? 二人ともお姉ちゃんのこと、好きー?」
「うん! ヒナ、おねーちゃのこと、だいしゅきだよー!」
「ユリおねーちゃ、やさしーもん! ヒノもだいしゅきー!」
…“変なことはしない” とは言いつつも彼女はかなり興奮した様子で、たとえる
なら噴火寸前の火山。そして二人の言葉が最後の一押しになったようで…。

「きゃあああッ! もう可愛いすぎるッ! こうなったらもう、二人のために買って
 おいた可愛いお洋服を着せ替えしてあげる! さぁ今からお部屋に…!」
「おいコラ! お前も結局親父と一緒じゃねぇかッ!!」
大噴火。子供二人分の体重などどこへやらといった様子でヒナとヒノを肩の上に
担ぎ上げ、そのまま部屋に突入しようとするも、何とかリョウが寸前で阻止した

ように見えたが


「いいじゃない? せっかくユリちゃんがこの子達のために買ってくれたんだもの。
 実は私も今日、色々と持ってきてるのよね…。ふふふふ…!」
「な!? お、おいおい! 娘をそんな、着せ替え人形にするつも…」
まさかの、アリスの賛同。リョウが止めようと手を伸ばしたときにはもう遅かった。
二人がそれぞれ子供を一人ずつ抱きかかえて、ユリの部屋へと突入。ほどなくして
部屋の中からきゃあきゃあと楽しげな歓声が巻き起こり…、一人取り残された
リョウはぽつりと…一言もらした。

「…あいつらも将来は、ああなっちまうのかな…」



ケース2 吸血鬼と人形と幼児

「わーい! おじちゃ、おっきい!!」
「おじちゃ、たかーい! おとーしゃより、おっきいね!」
「ム、ウヌヌヌ…。こら、あまりいじくり回してくれるなよ…」
…この光景を見たら、ヴァニラ・アイスやエンヤ婆は何と言うだろうか? 見ると
DIOの肩の上にヒナとヒノが乗っかって、髪の毛やハートの飾りをいじくったり
頬をつまんだりと完全にカリスマが崩壊している光景があり、それを見ながら
水銀燈は目に涙を浮かべて大笑いしていた…。

「きゃはははは! そういう姿もお似合いよぉ、DIO? …それにしても、大人
 でも貴方を見れば震え上がるのに、その子たちったら貴方の顔見ても全然
 怖がってるそぶりもないのねぇ? 将来大物になるわぁ…」
「フン! 確かにこのDIOを全く怖がらずにオモチャにするあたり、図抜けた
 度胸よ。こういう奴を部下に欲しかったものだがな…」
それは言うならば、無言の威圧感だろうか。たとえDIOが何をしていなくても
彼の前に立つと、人によっては氷を背骨に突っ込まれたような気分に
させられるのだが…、今彼の体によじ登っている二人は全くどこ吹く風で
威圧のいの字も感じていない様子でDIOにすっかり懐いており、彼も苦笑い
すると二人をソファの上に降ろした。

「よし…、このお遊びはここまでだ。では今からは、このDIOが、お前達に
“魔法” を見せてやろう。 いいな? 見逃さないようによーく見ておくのだぞ…」
「まほうー? うん、わかったー!」
今度は何が始まるのだろう。ソファに降ろされた二人はわくわくしながら
DIOを見ていたが、彼の言葉はまさに期待通りで。一層目を輝かせていると
DIOはニヤリと笑って指を鳴らし始めた。

「さて、それでは始めようか。…まずは水銀燈から黒羽を一枚もらうのだ」
「はい、ちゃぁんと持ってるのよ? ふふふ…」
DIOが水銀燈の方を向いて促し、彼女が二人に黒羽を一枚ずつ渡す。
最初は羽をぴこぴこと動かしていた二人もじきにその動きを止めてDIOの
方へと注目し、二人の視線を受けると両手を広げた。

「ではこれから、お前達が持っているその黒羽にこのDIOが “魔法” をかける。
 すると不思議。この黒羽が色々なものへと変わるのだ。…用意はいいか?」
準備完了を問うも、聞かれるまでもなく二人はもちろん縦に頷いて返答し。
それを確認したDIOが指を鳴らすと、次の瞬間には彼女らの手の中の黒羽が
白羽に変わっていた。

「ええー!? なんで? どーやったのー!?」
「しゅごーい! おはねの色、かわっちゃったー!」
今までは黒かったのが、一瞬で白に変わり。まさしく目の前で起こった不可思議な
“魔法” に二人はきゃあきゃあはしゃぎだし…、そんな二人を見てDIOはニヤリと
笑い、また指を鳴らすと今度は白羽が花に変わった。

「わー! こんどはおはなー! きれー!」
「フッフッフ。黒い羽が白い羽に変わって、今は花…。さぁ、次は何に変わるか?
 当ててみるがよい…」

………………………………………………………

「さて、と。奴らは寝付いたか?」
「ええ。もう今はすっかり夢の世界に行ってるわぁ」
それから、しばらく。すっかりご満悦といった様子で、二人は小さなベッドの
上ですやすやと寝息を立てていた…。

「それにしてもアリス達ったら…、夫婦水入らずの二人旅なんて、未だに
 アツアツなのねぇ。うふふふ……」
「まぁな。しかしまさか、子守をすることになるとは思わなかったがな…」
強面の自分が子守と、全く似合わない情景を思い浮かべてDIOは苦笑いするが
そんな彼に水銀燈はくすくすと笑いながら肩の上に飛び乗った。

「うふふ。さっきの魔法…ザ・ワールドの時間停止まで出してる人がどの口で
 言ってるのかしらぁ? 大奮発じゃない? うふふふ……」
「フン。そんなわけがあるかと言うところだが…、実際にそうだからな。
 あの時…古城の階段でリョウやアリスに使ったときも、奴らは鳩が豆鉄砲
 食らったような顔をしていたからこういう応用も利くと踏んだが、それも
 当たりだったようだな……」
水銀燈に突っ込まれ、DIOはフンと鼻を鳴らす。見るとその背後にはおなじみの
スタンド、ザ・ワールドの姿があり、主達に向かってびっと親指を立ててみせた。

「さて次は、起きがけに何か食うものでも作っておいてやるか。フム…」
「うふふふ。本当に似合わないわねぇ…。ふふふ…!」



ケース3 何故かメイド長

「DIOから頼まれてた届け物持ってきたわよ。これね」
「はい、確かに。わざわざありがとうございました…。お礼といっては何ですが
 お茶でもご馳走したいと思いますから、中に入ってもらえますか?」
場所は、紅魔館の入り口にて。やはり娘らを抱えた二人が何か届け物を届けに
来たようで、館のメイド長・十六夜咲夜が応対していたのだが……
咲夜の顔をヒナたち二人がじっと見つめており、それに気付いた彼女も
すっとかがみ込んで二人と顔を合わせた。

「ふふ、ヒナちゃんにヒノちゃんだったわね。あなたたちもごきげんよう。それで…
 どうしたの? お姉さんに何か言いたいことでもあるのかしら?」
「うん。えっとね…、おねーちゃのお名前、何だったかな……?」
「うー。この前教えてもらったのに、おもいだせないの…」
どうやら二人は、咲夜の名前を思い出そうとしているようで…。うんうん唸る
二人を大人達三人がにこにこと見守っていると…、二人は名前を思い出したのか
そろってぱっと顔を輝かせた。

「あら、その顔は…二人とも思い出せたのかな?」
「うん、おもいだせたー! おねーちゃのお名前、言えるよー!」
「それじゃあ、言ってご覧なさい? ふふふ…」
ようやく思い出せた二人に咲夜が小さく手を叩いて促すと、ヒナとヒノはお互い
顔を向き合わせて笑顔を浮かべて咲夜の方を向くと、声を揃えて発言した!

「ぱっどの、おねーちゃ!」

…瞬間、咲夜は能力を発動していないはずなのに、周辺の時間は停止した…。


「パッドの、お姉ちゃん…。ふふ、お二人さん。それは誰が教えてくれたの?」
名前を思い出したと思ったら、まさかこれが出てくるとは。咲夜は満面の、しかし
その裏には炎が燃えさかる笑顔を浮かべて二人に問いかけると、二人はまた
声を揃えて楽しそうに口を開いた…。

「ふぇ? …えーとね、これ、おかーしゃが教えてくれたの! おねーちゃの
 お名前、これで合ってるよね?」
「…へぇ。…お母さん…アリスがそんなことを、ね…」
「!! え、あ、あのね咲夜、ここ、これは……!!」
まさかのところで、とんだ暴露。咲夜ははしゃぐ子供らにはやはり笑顔のまま
だったが、アリスに視線を移すとその目つきを途端に鋭くして睨みつけ、睨まれた
アリスはあたふたと動揺し始めたが…、しかし、まだ終わりではなかった!

「あとね! おねーちゃのお歌もあるの! おかーしゃ、教えてくれたんだよ?」
「おねむのときに、うたってくれたの! すっごい楽しいお歌だよ!」
「! あら、まだそんなものまで…。よかったら、歌ってくれないかしら?」
「うん! いいよー!」
名前の次は、歌。一層慌てだしたアリスを見ればこちらもどんなものかは想像
するのは難しくなく…。アリスを鋭い眼力で制した咲夜が二人に歌うように促すと
ヒナたちは声を揃えて、無邪気に歌い出した……。


 ぺったん ぺったん ちゅるぺった~ん♪
 しゃくやの おむねは ちゅるぺった~ん♪
 ぜっぺき すいちょく まったいら~♪
 ちゅるちゅる おむねは おとこのこ~?♪

 ぺったん ぺったん ちゅるぺった~ん♪
 しゃくやの おむねは ちゅるぺった~ん♪
 ごまかし みえはり ぱっどいれ~♪
 おじょうしゃまにも わらわれる~♪

………………………………………………

「お歌、うたえたよー! どう? おじょうずだった?」
「…ええ、とっても。…私も、こんな素敵で素晴らしいお歌をあなたたちに
 教えてくれたアリスに、感謝しないといけないわね……?」
…そして、歌は終わり。怒りの炎からどす黒い何かを有する笑顔にレベル
アップした咲夜は子供達の頭を撫でると、アリスの方へゆらりと振り向き…
その瞬間に危険を察知した彼女は急いで子供達を抱きかかえて紅魔館を
出て行こうとした、が。咲夜が指を鳴らすとその瞬間、アリスの腕の中から
娘達二人が消え、リョウの腕の中に移動していたのだ。

「ふぇっ!? な、なんで? さっきまでおかーしゃに、だっこしてもらってたのに?」
「これ、DIOおじちゃのまほうにそっくりー! おねーちゃも使えるのー?」
…その種は、もちろん時間停止。時を止めたその間にアリスの腕からリョウの
腕に二人を移したもので、咲夜は今度はリョウの顔を見るとにこりと微笑んだ。

「…ええと、私、ちょっと奥方様と話がありますので…。申し訳ありませんが
 奥の間の、主人のレミリアのところに娘さん達と一緒に行っててもらえませんか?
 もちろん話は通しておきますので、ご心配なく…」
「あ、ああ。ええと…、だが…、これは……」
「ちょ、ちょっと待ってリョウ! 行かないでよ!」
…突然の事態に、動揺を隠しきれないでいるリョウ。視線を咲夜に向け、または
助けを求めるアリスに向け。どちらにするか決めあぐねている様子だったが…

「…どうなさいましたか? もう一度申し上げますが、場所は奥の間に……
 これ以上ないくらいの速やかなる移動を、お勧めいたします…」
「!! ぐっ! 確か…、そう! 一番奥の部屋でいいんだったよな! うん!」
…咲夜が発するその無言の威圧感は、ある意味ではDIOのそれ以上。ナイフを
のど元に突きつけられているような錯覚を覚えたリョウは、ここで陥落。
「…さ、さーて! どうもお母ちゃんはあのお姉ちゃんとお話あるみたいだからよ!
 今度は、レミリアお姉ちゃんとお遊びしてもらおうな!」
「うん! おはねぱたぱたのレミリアのおねーちゃね! わーい!」
「!! ま、まさか…! 待って! 一人にされたら、私…!」
追いすがるアリスに、文字通りに後ろ髪を引かれる面持ちで。しかし咲夜に
逆らうことなど出来るはずもなく、リョウは足早に外に出て行き……

「子供に罪はありません…。断罪すべきは、子供に邪を教えた…大人!」
「あ、あわわわわ…! ま、待って! そんな真剣にならなくても……!」
後には、女性が二人……。何とかアリスは脱出を試みようとするが、それも
叶うはずもなく。まさしく蛇に睨まれた蛙状態になってしまい、これから何を
されるのかとアリスが震えていると、咲夜はにやりと笑って一言…告げた。

「それでは今から、地下室へとご案内させていただきます。…久しぶりの
 お客様ですからね。フランドール様もさぞやお喜びになることでしょう…!」
「!!! ふ、ふふ、ふらんどーる…!? あの怪物と…!?」
その名を聞いた途端アリスの顔は一瞬で真っ青から蒼白に変わった。
全ての破壊を司る彼女のところに連れて行かれたら、何をされるかは今更
言うまでもない。アリスも動かない体を必死に動かして何とか脱出を図ろうと
したが、後ろから咲夜に襟首をがっしりと掴まれた…。

「さて、生けに…もといお客様一名をご案内します。ごゆるりと…」
「いーーーーーやーーーーーー!!」

その後地下室からは予想通りに…これ以上ないくらいに盛大な轟音が
起こり、紅魔館中に響き渡った…。

終わり
斜刺
http://2nd.geocities.jp/e_youjian/ld-rutubo
2009年10月07日(水) 15時51分39秒 公開
■この作品の著作権は斜刺さんにあります。無断転載は禁止です。
■作者からのメッセージ
ガキんちょ関連の小ネタは以前から色々あり、今回数がある程度まとまったので
投下しました。ユリやDIOのキャラ崩壊が著しくなっちゃってますが…。

この作品の感想です。
アリスwwいやワリスww
子どもに変歌教え何考えとんねやぁぁぁ~~ッッw!
そしてそんなアリスをスルーしたリョウに哀愁を感じるwww

しかしぱっどのお姉(自重 は反則ですよねぇ。
思わずニヤニヤが止まらなくなりましたがどうしてくれr(ry
50 遊星γ ■2009-12-23 21:59:01 59.135.39.136
いいなぁ、いいなぁ。
この子たちかぁいいなwwwレナならずとも、そしてユリならずとも、デレて
しまうのは分かる気がしますね!
そしてアリスよ……愛娘ズになんちゅー歌を……。

他のカップルも行き着いたらこんな風になるのかなぁ……。
ともあれ、リョウアリの大御所たる斜刺さんの甘甘SS、楽しませていただきました。ありがとうございます。
50 千鳥 ■2009-11-01 17:14:51 113.146.10.175
どうしよう……PCの前でニヤニヤが止まらないや。
こんなところを他人に見られたら激しく誤解されてしまいます。
斜刺さん、どうしてくれるんですか?

私としてはこれまでマリアリこそがジャスティスだったのですが……
リョウアリか……アリだな!
50 しゅん ■2009-10-11 10:10:05 123.255.128.158
これはしかたがないw
つい忘れてしまいますがアリスも東方Projectの登場人物ですからねぇw

しかしDIO、いい吸血鬼だw 別の話ではいつも通りですがw
50 名無しと呼んでください ■2009-10-09 18:32:03 221.36.143.154
やっぱりDIO様には子供が似合いそうだ、しかしユリのあの暴走振りは某鉈少女と同じ…そしてアリス、自業自得だww、御愁傷様ww 50 名那死 ■2009-10-07 21:23:47 126.97.208.168
合計 250
過去の作品なので感想を投稿することはできません。 <<戻る